007おしゃべり箱 番外編(142) 「追悼 ロジャー・ムーア」

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    「007おしゃべり箱」は映画007シリーズについてのあれこれをおしゃべりしています。

     

    007おしゃべり箱 Talking BOX of 007

     

    番外編[142

     

    追悼 ロジャー・ムーア

      Eulogy on the late ROGER MOORE

     

     

    by 紅 真吾

     

      読者諸兄はロジャー・ムーア氏著の「BOND ON BOND アルティメイトブック」はご購入されてましたでしょうか。

      今を去る事5年と半年の前の2012年の12月に、第23作『スカイフォール』の公開に合わせて「ボンド映画50周年記念」として出版されました。

      装丁のオビに記されている紹介文は、

    『007スカイフォール』を007倍楽しむために3代目007(最多7作主演)が全シリーズを案内する究極の007ガイド。

      裏オビには、

    ショーン・コネリーからダニエル・クレイグまでの全シリーズをユーモア溢れる語り口で紹介

      そして、目次の一部として、

    ・ボンドと悪役 大富豪ゴールドフィンガーから映画史に残る悪役ジョーズまで

    ・ボンドとボンドガール ウルスラ・アンドレスからハル・ベリーまで豪華美女図鑑

    ・ボンドと秘密兵器 ワルサーPPKから超小型ロケット入り煙草まで

    ・ボンドとボンドカー アストンマーチンからロータス・エスプリまで

    ・ボンド映画ロケ地 カオ・ピンガー島“ジェームス・ボンド島”からアギア・トリアダ修道院まで

     

    そのほか未公開の舞台裏、プレミア上映に訪れた女王陛下やダイアナ妃との写真、公開当時ポスター等、「世界が愛したスパイ」の貴重なコレクターズアイテム。

      となっています。

      ユーモアとウィットに富んだムーア氏の語り口が楽しく(この点は訳者の篠儀 直子氏の技量に脱帽です)、何回も読み返してしまいました。

      全223ページ。 ¥3.800+税の値段以上の内容だと思います。

     

      ところがッ、その3年後の事です。 第24作『スペクター』の公開に合わせて、「改訂版」なるモノが出版されたのでありました。

    「なんだよー、改訂版だとォ」、が正直な感想。

      出版時の宣伝では、‘14年に亡くなったジョーズ=リチャード・キール氏とのエピソードや、当時の執筆時には編集どころかロケ中であった『スカイフォール』についての想いが記されている、とされていた様な記憶があります。

      熱烈なる007ファンを自認するアタシとしては、+αがあるとなれば買わないワケにはいきません。

      とは言っても、こんな調子で新作公開に合わせて「改訂版」が出版されては、たまったモンじゃありません。 3LDKのマンションにアタシの趣味の書籍が置けるスペースは限られているのです。

    「ロジャーよ、引退して悠々自適だろ。 もう充分に稼いだだろーが」、と思いつつ、「しょーがねーなァ、付き合ってやろーか」、でした。

      「改訂版」の序文は、前作を踏まえて改めて書き直されておりました。

    「新作『スペクター』の公開に合わせてボンド映画の回顧のグレードアップをしてくれないかと出版社から言われた時、私はすぐさま引き受けたのだった」、とはムーア氏の弁。

      ムーア氏もさすがにご高齢とは思いましたが、その文面は相変わらずのムーア=ボンド。 ユーモアとウィットに富んだ語り口から、ムーア=ボンドがまだまだ健在である事を感じて、嬉しく思いました。

      「BOND ON BOND」によって、それまでのシリーズ全24作品がムーア氏のカラーで上手に包装された様な感があります。

    「やるなぁ、ロジャー。 次の改訂版を楽しみにしているぜィ」

     

     

    「ジェームス・ボンドはショーン・コネリー」と語るオールド・ファンにとって、ムーア=ボンドの洒脱なユーモアは耐えられなかった様でした。

      が、’77年公開の『私を愛したスパイ』のヒットは老若男女誰もが楽しめる007シリーズの新しい方向性を決定付けました。

      もはやコネリー=ボンドのテイストなど微塵も無く、ロジャー・ムーア氏のユーモアやコミカルな性格が作品に反映され、大いに支持されました。

     

      007シリーズにおけるロジャー・ムーア氏については、拙著『Vol.34 ロジャー・ムーア 考』で取り上げて、「シリーズ作品の常識をひっくり返した」と氏の功績を分析しました。

      ショーン・コネリー氏がシリーズの基礎を創ったボンドならば、ロジャー・ムーア氏はシリーズが進むレールを創ったボンド、と言って良いと思います。

      ムーア=ボンドの存在無くして、ダルトン=ボンド、ブロスナン=ボンド、クレイグ=ボンドはあり得ません。

      こうして見ると、ムーア氏が演じた7作品は、シリーズ全作品の中で大きなウェイトを占めているのではないでしょうか。

     

     

      コネリー=ボンドの作品は、中学生までに大半をリバイバルで観ていました。

      そして、私がガールフレンドと2人で観た最初の映画が、高校2年の12月に公開された『私を愛したスパイ』。 冬休みに入って早々の時でした。

      冒頭のユニオンジャックから一気にのめり込んでしまったのを、今でも覚えています。

      私の青春の一時期、ジェームス・ボンドはロジャー・ムーア氏だったのでありました。

      洒脱なユーモア。  ジェントルマンを気取っていながら、ウィットあるダンディズム。 

      かたくななフィリプ・マーロゥに傾倒しつつも、スマートなムーア=ボンドは、”粋な男”のお手本でした。

      ガールフレンドを前にして、読者諸兄の多くが似た様な経験がおありなのではないでしょうか。 

      「BOND ON BOND」は、そんな“あの頃”に感じたジェームス・ボンド=ロジャー・ムーアを彷彿とさせる内容でした。

    「やるなぁ、ロジャー。 次の「改訂版」を楽しみにしてるぜィ」

      本当にそう思っていたんです。

     

     

     

     

    『007おしゃべり箱』 will return

     

    月末の金曜日は『007おしゃべり箱の日です。
    お忘れなく


     

    【お知らせ】

    ムーア氏が「出演作の中で最も気に入っている作品」として挙げたのが『私を愛したスパイ』。

    拙著でも触れておりますので、ぜ合わせてご覧下さい。

    Vol.4「18歳未満の閲覧を禁ず」

    Vol.32「必修の007作品(初めての007)/後編」

     

     

    『掲載一覧〔1st〕Vol.1 Vol.12 & 番外編(1)(48)


    『掲載一覧〔2nd〕Vol.13Vol.25 & 番外編(49)(91)


    『掲載一覧〔3rd〕Vol.26Vol.35 & 番外編(92)(129)

     

    『掲載一覧〔4th〕Vol.36 〜 & 番外編(130)

     

    があります。ぜひご覧ください

     

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    007おしゃべり箱 コメント御礼 (10)

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      by 紅 真吾

       

        カルマン・フィッシュ 殿

        拙著ブログにコメント頂き、ありがとうございます。

        また、拙著をご贔屓頂き、誠にありがとうございます。

        カルマン・フィッシュ殿からは、 『Vol.48−2 ボンドのベレッタ.25口径の正体』について、下記のコメントを頂戴しました。

       

      こんばんは、お久しぶりのカルマンフィッシュです。
      いつも大変お世話になっております。
      「ボンドのベレッタ.25口径の正体」前編・後編及びリンクの貼られている記事を全て拝読いたしました。大学教授の研究発表のような精密な内容とそれに伴う見解の鋭さに驚かされました。素晴らしいですね。フレミング氏がご存命であったのなら、紅さんと是非徹底討論していただきたいものです。

      お恥ずかしながら、私は銃に関して興味が薄く、基礎知識が全くないものですから、ボンドのベレッタの型式など、これまで一切気にしておりませんでした。
      紅さんが『ワルサーvsベレッタ、ベレッタの逆襲』で書いていらっしゃったように、Mの「ベレッタを持たせておく訳にはいかない」とボンドに言うシーンに感化され、「ワルサーの方が素晴らしい」と思わせられたクチでして・・・単純にボンド=ワルサーというイメージを持ち続けておりました。
      しかし、「おしゃべり箱」の『原作紹介』を「カジノ・ロワイヤル」から順に読んで参りましたところ、「ロシアから愛をこめて」までの5作品までずっとベレッタでしたので、「あれ?ボンドって、ずっとベレッタの人だったんだ」と、遅まきながら感じるようになり、そのタイミングで、「ボンドのベレッタ.25口径の正体」の記事が掲載されたものですから、何か強いご縁を感じます。
      ついて行けるかどうかわかりませんが、少しずつ勉強してみようと思いました。

      その入口として、サイズからご説明いただきましたことで外側からのイメージが掴めましたので、分かりやすかったです。ありがとうございました。Hi-lite との対比は名案でしたね。
      メカニズムの方は『図解!自動拳銃の作動メカニズム』を読みましたが、正直なところ、まだ飲み込めておりません。
      しかし、それでも今回の記事にあるグリップ・セーフティーの安全装置としての機能とパーツの場所は理解できました。
      また、原作からの引用文と照らし合わせたご意見より、
      「15年間連れ添った」⇒「15年間、同じモデルを使っていた」になるのでは? という解釈は、なるほどと納得が行きます。
      そして代々同じモデルであったことから製造年を突き詰めて、セーフティの付いていないM950と推定し、テープ巻の矛盾点を指摘されたこと・・・、コレ、すごいですね? これをネタに何か推理小説が書けそうじゃないですか? 数々の『フレミング・マジック』のトリックを明かしてしまう、素晴らしい素養と教養とリサーチ力をお持ちですので、紅さんご自身を探偵のモデルにしたシリーズをお書きになってみてはいかがですか?

      ・・・と、ついつい、そんなことまで考えてしまうほどに影響力のある記事でした。

      次回の「おしゃべり箱」も楽しみにしております。


       

        リンクの記事まで全てご覧頂いたとの事、ありがとうございます。

        「大学教授のような研究発表」とは過大評価ですヨ。 汗顔の至りです。

        実は、チョッと詰めが甘いな、とは今でも感じております。

       

       

        拳銃の大きさは、トリッガー(引き金)周りのデザイン(大きさ)で推察出来ます。

        軍用拳銃の場合は、寒冷地での手袋を着用した状況も考慮しておりますからチト大き目ですが、総じてどんな拳銃もこの部分の大きさは似たり寄ったり。

        ですから、トリッガー周りに対して全体のポロポーションがどれくらいの大きさか、でその拳銃そのものの大きさはイメージ出来ます。

        とは言っても、一般のかたはそんなの判らないですよ

        で、タバコのパッケージを描き添えました。 こーすりゃ判り易いでしょ。

        でもコレ、アタシのアイデアではありません。 誤解の無き様お願い申し上げます。

        写真に撮った物の大きさを表現する為に、誰もが良く知っている物を写し込む、と云うテは良く使われます。

       

       

        ご存知の様に、拙著『007おしゃべり箱』は007シリーズについて、ただ、あーだったこーだったと記するだけでは無く、筆者=アタシの視点・切り口からの感想・考察といったスタイルをウリにしております。

        実は『原作紹介/〜』を始めた理由の1つに、「ボンドのベレッタ.25口径」を取り上げたい、と云う思いがありました。

        「ベレッタ.25口径」については、ガン・フリークの間では諸説紛々ありますが、皆さん、ある部分の描写のみをを取り上げて推測なさっている様に感じました。

        実際は「あちらを立てればこちらが立たず」、なんです。

        加えて、原作(翻訳版ですが)を精読してみると、イアン・フレミング氏の銃についての知識の稚拙さが散見されます。

        こういった点を紹介しなければ、次の自説の展開に進めません。

        とゆーワケでェ、『原作紹介/〜』は必要だったのでありました。

       

       

        「ボンドのベレッタ.25口径」の候補に挙げられているモデルについては、詳しい資料が少ないです。

        ある程度の資料があったのは、スケッチに乗せたM950のみ。

        寸法などはっきり分かりましたので、同じ縮尺でタバコを描き込めました。

        とにかく詳しい資料が少ないので、少々誤魔化した詰めが甘い内容となってしまいました。

        が、今回の主旨は“詳しい資料を基にしたアラ捜し”ではありません。 “ボンドのベレッタを追及するのは、フレミング氏お得意のマジックに振り回されるだけ”を訴えたかった、です。

      「じゃがいもで作ったウォッカじゃなくて、穀物で作ったウォッカを使うと、もっとうまいんだぜ」 〜「カジノ・ロワイヤル」より。

        こんな事を平気で書いちゃうひとなんです。 フレミング氏は

        (コレについては、 『番外編(71)「ジョーカー・カクテル」』を参照下さいナ)

        “こんな調子で書かれた拳銃の描写など、マに受ける方がアホなのではないか”ですね。

       

       

        「フレミング氏と徹底討論」ですかァ、ご冗談を。

        フレミング氏が上梓された小説から推察されるのは、“氏は銃火器についての知識が希薄だった”です。

        これでは討論なンぞになりませんでしょう。

        それよりも、彼の世でお会いしたら、ぜひ大戦中の事をインタビューしたいです

        よく、 “デスク・ワークを離れて現場に出かけていった”とされておりますが、アタシにしてみれば “マユツバ”なんですよね。

        考えてもみて頂きたい。 ここで言う「現場」とは、「建築現場」などではありません。

        死ぬか生き残れるかの特殊作戦の最前線です。

        そんなトコロに “新聞記者上がりの(現場を知らない)実際の戦闘を知らない事務屋さん”を派遣するなどあり得ないのでは無いでしょうか。 また、来られたって迷惑(足手まとい)です。

      「フレミングさん、貴殿はこの作戦の中で大事な人物ですから此処の拠点から動かないで下さい」、ですね。 アタシが“現場の指揮官”であればそう言って、うっちゃっちゃいます。

        従兄弟のクリストファー・リー氏のインタビュー映像を見ましたが、「はてさて、どこまで本当なんだろーか?」、が正直な感想です。

        そう思いませんかぁ。 だって、「カジノ・ロワイヤル」1作だけですョ。 フレミング氏が実体験から膨らませたジェームス・ボンドのお話しは。

       

        

        銃についてお勉強をなさるのですか。

        それはウレシイです。 ガン・フリークのかたが1人でも増えるのはウレシイ。

        しかし、さほど興味が少ない事に首を突っ込んでも、面白くもナンともありませんョ。

        イイんじゃないですかねェ、「(銃について)不思議に思った事や疑問を感じた事は、紅真吾に訊く」、で。

        例えば、『スカイフォール』でのシーン。

      ・狙撃する目の前のガラスに穴を開けるのは必要なのか?→必要です。

      ・電灯に仕掛けた散弾銃のタマとクギは殺傷力があるのか?→さほどでは無いと思います。

        この様な「なんでェ〜?」があれば、ご遠慮なくどうぞ。

       

       

        今後とも、拙著『007おしゃべり箱』に変わらぬご贔屓を賜ります様、お願い申し上げます。

        文末になりましたが、カルマン・フィッシュ殿のご健勝とますますのご活躍をお祈り申し上げます。

       

       

       

      『007おしゃべり箱』 will return

       

       

      『掲載一覧〔1st〕 『掲載一覧〔2nd〕 『掲載一覧〔3rd〕 『掲載一覧〔4th〕

      があります。ぜひご覧ください。

       

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        コメント御礼(9)

         

         

        by 紅 真吾

         

          007 殿

          拙著ブログにコメント頂き、ありがとうございます。

          読者諸兄からのお便りは、心底ウレシイ。

          007殿からは『Vol.28「ジョージ・レーゼンビー 考』について、下記のコメントを頂きました。

         

        レーゼンビは現在77歳で実業家だそうです。

        本作品は晩年になり再評価されています。スキーアクションものの原点ですね。

         

          先日、レーゼンビー氏は米国のTVドラマ「Becoming Bond」にご出演とか。

          (盟友:カルマン・フィッシュ氏による『カルマン・フィッシュにうってつけの日「久々ジョージ・レーゼンビー「Becoming Bond」米Hulu配信』に詳しく載っています)

          この記事を拝読した時、相変わらず007=ジェームス・ボンドを引きずっているなー、と思いました。

         

          スキーアクションものの原点、との弁。 実にそうですね。

          が、パッと見回してみれば、スキーアクションってシーンを盛り込んだ映画は少ない様に思います。

          やはり、寒冷地で足元の悪い状況での撮影は、困難が多いのではないでしょうか。

          また、雪面にはスキーで滑った跡=シュプールが残ります。

          “新雪に刻まれていく1本のシュプール”、は絵になりますが、リハーサルが効かないぶっつけ本番です。 嫌がられますわな。

         この点、 『女王陛下の007』は良くやった、と思います。

          撮影から上がって来たピーター・ハント氏の面目躍如でありましょう。

          撮影と言えば、スキーアクションもさることながら、“ヘリコプター撮影”が見事でしたよね。

          “ヘリ撮”の絵の美しさは、何回観ても飽きません。

          さすが、ピーター・ハント。

          小学3年生の時にロードショーで観た後、リバイバル公開はありませんでした。

          その後、小さな小屋で上映するのを雑誌の“ピア”で見つけて出かけていったのは、大学生の頃でした。 もちろんサボりです。

          2回観ちゃいました。 139分×2。

          やはり『女王陛下の007』は、絵がイイですね。 “キマッてる”です。 ほんの数秒ですが。

          最近の映画は“カット割り”などでの編集は見事ですが、是非とも『女王陛下の007』を教材として頂きたいと思います。

          007殿はどうお感じになりましたか。

         

          今後とも、拙著『007おしゃべり箱』をご贔屓下さいます様、お願い申し上げます。

          文末になりましたが、007殿のご健勝とますますのご活躍をお祈り申し上げます。

         

         

         

         

        『007おしゃべり箱』 will return

         

         

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        があります。ぜひご覧ください。

         

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        007おしゃべり箱 Vol.48−1 『ボンドのベレッタ.25口径の正体 / 前編』

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          「007おしゃべり箱」は、映画007シリーズについてのあれこれをおしゃべりしています。

           

          007おしゃべり箱 Talking BOX of 007

           

          Vol.48-1

           

          『ボンドのベレッタ.25口径の正体 / 前編』

           

          What Model is James bond’s BERETTA 〜1st part

           

          by 紅 真吾

           

            原作第1作「カジノ・ロワイヤル」から第5作「ロシアから愛をこめて」まで、ジェームス・ボンドのサイド・アーム(拳銃)は、「ベレッタの.25口径」でした。

            この「ベレッタ.25口径」とはどの様な拳銃だったのか?

            イアン・フレミング氏はどのモデルを選んでジェームス・ボンドに持たせたのか?

            ガン・フリークの間では、尽きぬ話題となっております。

            なぜなら、原作小説の中では、このベレッタ.25口径については、型式(モデル名)の記述が無いからです。

            よってガン・フリークの間では諸説紛々ありまして、私の場合はVol.10『ワルサーvsベレッタベレッタの逆襲』の中で、M418というモデルの線が強い、とのべました。 以下、重複しますが転記します。

           

           候補モデルは1919年から1934年まで生産されたM1919。 もしくは1934年から1941年まで生産されたM318。 または1941年から生産されているM418、のいずれかと思われる。

           個人的にはフレミング氏はM418を参考にしたのではないかと思っている。

           このM418はスタンダードモデルの他に、ニッケルメッキモデル、エングレーブ(彫刻)モデル、アルミフレームモデル、などが有り、ご婦人向けポケットピストルとしての有名モデルだった。

           

            今回、『原作紹介/〜』の企画で第1作「カジノ・ロワイヤル」から第6作「ドクター・ノオ」までの原作小説を精読ました。

            その結果、おぼろげながら「ベレッタ.25口径」の姿が浮かび上がってきたのであります。

            今回は、そんな「ボンドのベレッタ.25口径」についてのレポートです。

           

          *****

           

          【ボンドのベレッタ.25口径とは、どの様な拳銃なのか】

            ところで、レポートの前に、最近の拙著の読者諸兄にむけて「ベレッタ.25口径」について、改めて簡単に説明致します。

            要するに、使用するカートリッジ(実包)が.25ACPと極めて小さいのでサイズも極端に小さい拳銃です。 (このカートリッジの大きさについてはVol.15『図解!自動拳銃の作動メカニズム/前編』で図解しておりますので、参照下さい

            このテの拳銃は、一般に「ヴェスト・ポケット・ピストル」と呼ばれています。 すなわち“チョッキのポケットに入る大きさ”ですね。

            戦前戦後にかけて、この様な.25口径の「ヴェスト・ポケット・ピストル」はイタリアのベレッタ社、ドイツのワルサー社、ベルギーのファブリック・ナショナル社、米国のコルト社、など有名メーカーはもちろんの事、弱小メーカーが競って発売しておりました。

           

            代表的な「ヴェスト・ポケット・ピストル」として、現在でも発売が続けられているベレッタ社のM950をスケッチしてみました。

           

           

            大きさの目安として、同じ縮尺でタバコのパッケージを描き込みました。 ま、とにかく、こんなカンジの拳銃であるとイメージしてください。

            次に、原作の中で記されたボンドの「ベレッタ.25口径」はどの様な拳銃であったでしょうか。

            過去の『原作紹介/〜 解説編』での【銃(Gun)】で、抜き書き紹介しておりますが、改めて列記します。

           

            “引き出しを開けて軽い鹿革の拳銃ケースを出し、わきの下3インチあたりにくるように肩に吊る。 それから別の引き出しのシャツの下からやけに平たい25口径のベレッタ自動拳銃を取り出した。 握りの部分は骨組みだけを残して飾りを取り、上をテープで巻いてある拳銃だった”

            “ボンドはクリップと薬室に放り込んであった1発も抜いてしまうと、何回もパチパチと動かしてみる。 最後に薬室を空にしたまま引き金を引いてみる。 また薬室に弾丸を入れクリップも入れて安全装置をかけると、肩吊りケースの浅い穴にスポッと落とし込む”

          〜「カジノ・ロワイヤル」より。

           

            “なんということなく、彼は右手を上着の下につっこみ、左わきの下に吊ったせみ皮の皮鞘から、握りの飾りをはずした愛用の.25口径ベレッタ自動拳銃を抜いた。 この前の仕事のあとで、Mが緑のインクで「きみには、これがいる」と書き添えて記念にくれた、新しい拳銃だった。

            ボンドはベッドのそばにより、ぱちんと弾倉をはずし、薬室の弾丸だけ1発ベッドカバーの上にはじきだした。 5、6回作動を確かめてみる。 引金を引いたときの引鉄バネの感じをためしながら、から撃ちしてみる。 遊底を引いて、撃針のまわりにほこりがついていないのを、たしかめた。 この撃針はわざわざ何時間もかけて、やすりで特に鋭くとぎすましたのだった。 青い銃身を銃口からなでてみる。この銃口の無用の長物、照星も、出すときにひっかからないようにわざわざ切り落としたのだった。 やがてはじきだした弾丸を弾倉に入れると、ほっそりとした拳銃の平ひもをつけた握部にもどす。 最後にもう一度作動をためして、弾丸を薬室へ送りこむと、安全装置をかけて皮鞘にすっとしまった。”

          〜「ダイヤモンドは永遠に」より。

           

            これらの記述から、「ボンドのベレッタ.25口径」の最大の特徴は、“グリップ・パネルを外してしまってテープ巻き”としている点です。

            我々ガン・フリークの間では、この“テープ巻き”をどの様に解釈するか、処理するか、が最大の問題点である、と言って良いと思います。

            なぜなら、ベレッタ社による代々の「ヴェスト・ポケット・ピストル」には、グリップ・セーフティーが付いているのです。

            ここで、一般のかたにグリップ・セーフティーについて解説致します。

            番外編(141)『ブラジャー・ホルスター』で掲載したCMCのモデルガン=ファブリック・ナショナル社のM1910に再登場してもらいます。

           

          通常の状態

              

           

          しっかりと握り込んでグリップ・セーフティーが押し込まれた状態

              

           

          コレではよく解りませんから、グリップ・セーフティー部を赤く塗ってみます。

             

           

          通常の状態

              

          この様に、赤く塗った部分が出っ張ってきているのが解ります。

           

            この可動部分によって、しっかりと握り込んだ状態で無いと撃発しないのがグリップ・セーフティー機構です。

            で、この上からテープを巻いたって後ろがペコペコと動くのですから、巻いたテープはすぐに緩んでしまうだろ、と云った意見です。

            しごくもっとも。

            グリップ・セーフティーを備えた拳銃に“グリップ・パネルを外してテープ巻き”、はチト難があります。

            文末に紹介している『ジェームス・ボンドの部屋&007の武器庫』の管理人氏も、「M418のグリップ・セーフティーが付いていない初期モデルであろう」と意見を述べていらっしゃいました。

            が、私の意見は逆です。 と、言うか、モンダイにしません。

            そもそもグリップ・セーフティーなど無用の長物です。

            グリップ・セーフティーの仕組みとは、内部の出っ張り部分でトリッガー・バーに連動するシアー(逆鉤)(この部品が動いてハンマー(撃鉄)をリリース、もしくは、ファイアリング・ピン(撃針)をリリースします)の動きをブロックしているモノ。

            発砲するつもりなど無かったのだが、何かの拍子にトリッガー(引き金)に指が触れて撃発、などといった事が起こらない様に組み込まれたセーフティー機能です。

            要するに、お素人さん向けの安全装置ですね。

            “拳銃は自分の服と同じくらい大切”といった人達(合法、非合法を問わず)にとっては“要らない安全装置”です。 よってコロしてしまいます。

            可動スペースに当てモノを噛まして握り込んだ状態で固定、その上から“テープ巻き”としてしまえばOKなのです。

            私がボンドであれば、当然そうします。

           

          *****

           

            先に紹介した原作の第6作「ドクター・ノオ」の冒頭では、ボンドは長年に渡って愛用してきた「ベレッタ.25口径」をMに取り上げられていまいます。

            MからワルサーPPKへと変更させられたボンドは、もうベレッタに未練たっぷりでした。

            “そっとデスクの上の拳銃とホルスターに目を移す。 この醜い鉄片と15年間連れ添って暮らしてきた事を思い出していた。 こいつの立てる一声で命を救われた事が幾度か、ボンドは思い出していた”、と記されていました。

            そりゃそうでしょうねエ。 自分が気に入っている道具を替えさせられるのは、誰だってイヤなもんです。

           

            ン? でも、ちょっと待てよ。 「15年間連れ添った」だと?

            この時のボンドの「ベレッタ.25口径」は3代目のハズ。 ナンかヘンじゃねーか?

            拙著『原作紹介/〜』をお読み頂いている諸兄なら、スグにヘンだとお気付きになるでしょう。

            そんな細かいトコロは忘れてしまった諸兄、拳銃についての記述など記憶に残っていないとおっしゃる諸兄に向けて、(拙著を読んでいないヒトはここでは無視する)改めて整理します。

            第3作「ムーンレイカー」の終盤で、ドラッグス卿に捕らえられたボンドは、ベレッタを捕られてしまいました。 そんなワケで、物語ラストで本部に戻ったボンドにMが、「君にはこれが要る」と、新しいベレッタをプレゼントしてくれました。

            この時点で2代目です。

            で、その2代目ベレッタも第4作「ダイヤモンドは永遠に」の終盤で、クイーン・エリザベス二世号の船室でウィントとキッドと云う2人の殺し屋を倒した際に、2人の内輪もめを演出する為に船室に残してきてます。

            したがって、第5作「ロシアから愛をこめて」の時のベレッタは3代目ですね。

            いや、もしかしたら4代目だった可能性すらあります。

            第1作の「カジノ・ロワイヤル」の中盤で、ボンドはル・シッフル一味に捕まってしまい、ベレッタを捕られております。

            その後、やって来たスメルシュの男にル・シッフル一味は片付けられてしまい、気を失ったボンドは駆けつけて来たマチスらに助けられました。

            後半は療養所や海辺のコテージに舞台を移して、ヴェスパー・リンド嬢への“恋は盲目”状態でありました。 この中では、捕り上げられたベレッタの事など1行も記述がありません。

            愛用のベレッタは捕られたまんま。 と、なると、原作第2作の「死ぬのは奴らだ」でのベレッタは2代目であったとなります。

            ま、ここでは救出に来たマチスによってル・シッフル一味のアジトが捜索され、ボンドのベレッタが見つけ出されて後で返された、と好意的に解釈しておりますけど。

            とにかく、「ドクター・ノオ」の時点でのボンドのベレッタは3代目(もしくは4代目)。

            「15年間連れ添った」は、同じ拳銃を15年間使っていた、では無く、同じモデルの拳銃を15年間使っていた、と解釈するべきでしょう。

            そうでないとツジツマが合いませんよね、フレミングさん。

           

            となれば、候補モデルもヘッタクレもありません。

            3挺も同じ型のモデルとなれば、ボンドの「ベレッタ.25口径」とは、フレミング氏がボンド小説を執筆していた当時の現行モデル以外にあり得ません。

            前述のM418は1951年に生産終了となっています。 小説「カジノ・ロワイヤル」の発表が1953年。 仮にボンドの初代のベレッタがこのM418だとしても、2代目、3代目と続きません。

            既に生産中止となったモデルの中古品を探してくる、もしくは、どこかの倉庫に眠っていた型落ち品を見つけてくる、といったテも無くはありませんが、設定としては無理があります。

           

            この様に推察を進めて来ると、ジェームス・ボンドが愛用した「ベレッタ.25口径」とは、1950年に発表されたM950シリーズのモデルとするしかありません。 (冒頭に載せたスケッチのモデルです)

            ところが、実は、上記のM950には、マニュアル・セーフティーが無いのであります。

            トリッガー(引きがね)の後ろにソレっぽいレバーがありますが、コレはテイク・ダウン・ラッチ。 分解用のラッチです。

            とにかく、ヒラタク申し上げれば「指で操作する安全装置が無い」、です。

            米国向けの輸出モデルには、マニュアル・セーフティー付きのモデルがあった様ですが、基本的にはM950にはマニュアル・セーフティーは付いていません。

            すなわち、M950であった場合は、“安全装置をかけてから革鞘に収めた”はあり得ないのでありました。

            また、グリップ下の後ろにあるボタンは、マガジン・リリース・ボタンです。 ココを押してマガジンを抜きます。 

            グリップ・パネルを外してテープ巻き、はムリですね。

            また、1950年の発表ですから、1958年に発表の「ドクター・ノオ」で、“15年間連れ添った”はあり得ません。

            こうなると元の木阿弥。 では「ボンドのベレッタ.25口径」はナンだったのか?

           

          *****

           

            1回の掲載で収まりきらなかった為『ボンドのベレッタ.25口径の正体 / 後編』へとお進み下さい。

            おぼろげながら浮かび上がって来た「ボンドのベレッタ.25口径」について、斬り込んだレポートです。 

           

           

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          007おしゃべり箱 Vol.48−2 『ボンドのベレッタ.25口径の正体 / 後編』

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            「007おしゃべり箱」は、映画007シリーズについてのあれこれをおしゃべりしています。

             

            007おしゃべり箱 Talking BOX of 007

             

            Vol.48-2

             

            『ボンドのベレッタ.25口径の正体 / 後編』

             

            What Model is James bond’s BERETTA 〜 2nd part

             

            by 紅 真吾

             

            【ボンドのベレッタ.25口径の正体】

               『ボンドのベレッタ.25口径の正体 / 前編』で記した様に、実は「ベレッタ.25口径の正体」とは、霧の中。 単純に特定できるモノでは無かったのです。

              上記では、様々な考察を進めて結論を出しましたが、事はそう簡単に結論付けられるテーマでは無いのでありました。 (上記の考察を簡単と呼べるかどうかは別として)

              では、冒頭に述べた、「おぼろげながら浮かび上がって来た「ベレッタ.25口径」の姿」とは?

             

              結論から申し上げます。

              「特定のモデルは無かった」 です。

              「イアン・フレミング氏はあるモデルを選んでボンドに持たせていた、では無い」 です。

              すなわち、ただ単に「ベレッタ社のヴェスト・ポケット・ピストル」といっただけのイメージで小説を進めていった、と推察しています。

             

            「そんな事は無いだろッ」

            「紅真吾はナンて事を言いだすンだ?」

            「こいつは今までイロイロと面白い事を言っていたが、今回ばかりはトンデモナイ事を言い出しやがった

              そんな声が聞こえてきそうです。

              私だって初めから「特定のモデルは存在しない」なんて思ってはいませんでした。

              現にVol.10『ワルサーvsベレッタベレッタの逆襲』の執筆時には、アレやコレやと推理しておりました。

              だってそうではありませんか。

              ボンドの愛車=ベントレーについては、

              “4.5リッターのベントレーでエムハースト・ヴィリヤーズの加速装置を付けた最後の型だった”

              “軍艦のようなねずみ色に塗ったコンバーチブルのクーペで、めったに屋根は外さない”、“時速90マイル(時速約145キロ)の速度で長時間走る力を持っているし、それでもまだ30マイル(約48キロ)の速度の余力を持っているというクルマだった”

              “フォグライトを点けて、双子のようなマーシャル・ヘッドライトを消した”

              “ひとりが長いナイフを出して、コンバーチブルのフードのわきの布地の部分を切り開き”

            〜「カジノ・ロワイヤル」より。

             

              “車は1930年型4.5リッターのベントレーのクーペ。 このクーペには増速装置をつけて、うまく使いこなしているから、必要があれば時速100マイルで飛ばせる”

            〜「ムーンレイカー」より。

             

              といった記述がありました。 (各小説の『原作紹介/〜 解説編』の【車(クルマ)】の中で取り上げております)

              また、「女王陛下の007」では、

              “シャーシーはRタイプで、大型六気筒、後輪車軸比13対40というしろもの”

              “ラリー出場クラスの車好きなら誰でも取り付けている自動安定装置”

              “マグネット式クラッチで制御するアーノット増速装置(ロールス・ロイスの会社では車軸のベアリングが荷重に耐えきられないので責任は負えない、と手を引かれてしまった装置)”

              との記述がありました。

              ボンドの愛車であるベントレーがどの様なモデルであったのかは、私には解りません。

              しかし、少なくともフレミング氏の頭の中では「こーいったクルマ」といった特定のモデルがあって、小説ではそれが描写されている、と思っていました。

              同様に「ボンドのベレッタ.25口径」も特定のモデルがあって、それが描写されている、と。

             

              実はこれがワナだったのです。

              平たく申せば、「騙されていた」のであります。

              「騙されていた」が語弊があるとすれば、「フレミング・マジック」に引っ掛かった、でありましょう。 (この「フレミング・マジック」と云う単語は、私の造語です) 

              この「フレミング・マジック」については、Vol.17『フレミング・マジック』として解説しておりますが、結論としては、「読者が解ろうが解るまいが、テキトーな単語を並べ立てて読者をケムに巻く」、「およそ有り得そうも無いお話しでありながら、ディティールに固有名詞を並べ立てて読者をその気にさせる」、です。

              これを私は「フレミング・マジック」もしくは「フレミング効果」である、と述べました。

              実は、我々はこの「フレミング・マジック」に、ものの見事に引っ掛かってしまっていたのです。

              「ボンドのベレッタ.25口径」も当然として特定のモデルが存在する、と。

             

            *****

             

              そもそも、ボンドの拳銃が「ベレッタ.25口径」から「ワルサーPPK」へと変更になったのは、銃器の研究家であったジェフリー・ブースロイド氏の意見による、とされています。

              2人は会った事はあるでしょうが、意見や問い合わせなどはもっぱら書簡で行われた、と思っています。

              その為、ブースロイド氏の意図が伝わりきれずに、フレミング氏は当時リヴォルバー用のホルスターしかない「バーンズマーティンの3スタイル・ホルスター」をPPK用として選んでしまいました。

             

            小説「ドクター・ノオ」での「大きいやつはどうかね?」も、同じく意図が伝わりきらなかったものと推察しています。

              フレミング氏の問いは、まさしく「よりラージ・サイズの拳銃は?」 であったと思います。 クラブ礁島へ持っていく拳銃を選ぶ際に、「PPKより重い」、「PPKより射程が長い」、と記しておりましたから、フレミング氏のセンチニアルについてのイメージは、“PPKより大型”であったと思われます。

              ところが、ブースロイド氏は「大きいやつは?」の問いを、“.32口径よりも大きな口径、大きなカートリッジを使用する拳銃”、と解釈した。 ボンドが携行するに相応しい小型拳銃で、より弾頭エネルギーが大きいカートリッジを使う拳銃は?、と。

              そういった訳で、.38口径のスナブ・ノーズ・リヴォルバーを推奨した。

              銃身が2インチと云う、極めてコンパクトなスナブ・ノーズ・リヴォルバーは、コルト社、スミス&ウエッソン社、が何種類か出しておりましたが、S&WのM36チーフス・スペシャルは通常6発の装弾数を1発減らした5発とした、コンパクト性を重視したモデルです。 M40センチニアルは、そのM36のハンマー(撃鉄)を内臓式にしたモデルです。

              今でこそ、大型拳銃の短縮モデルは各社何種類も出していますが、当時ブースロイド氏としてはなかなか良い選択であると思います。

              が、フレミング氏の質問の意図・要望からは外れてしまった。

             

              フレミング氏については、大戦中情報部に勤務し、現場に出る事も少なくなかった、と伝えられています。

              が、私としてはこの点、疑問符を付けざるをえません。

              少なくとも現場に出て工作員と行動を共にしたならば、拳銃は手にした事があるハズ。

              発砲した事は無くとも、極めて身近で拳銃を目にしたハズです。

              ブースロイド氏へ「PPKより大きいやつは?」の問いを送って、カタログと回答が返ってきた。

              それを見たフレミング氏にある程度銃についての知識があったなら、質問に対して違う回答が来てしまった事は直ぐに判るハズです。

            「いやブースロイドさん、私が聞きたいのは・・・」と。 

              そうでは無く、「ブースロイド氏が推奨するのはコレか」と、スンナリ小説の中に書き込んでしまった。 

             

              イアン・フレミング氏が銃器について記述したカ所は『原作紹介/〜 解説編』で取り上げて、ヘンな記述である事を指摘してきました。

            描写をすればする程、誤りである点が露見してしまっています。 番外編(75)『ベレッタの撃針』を参照下さい)

              また、前述したグリップ・セーフティーについてもそうです。

              グリップ・セーフテを備えた拳銃に、“グリップ・パネルを外してテープ巻き”は明らかに難があります。

              私が述べた様に、グリップ・セーフティーの機能を殺してしまうのが実用的ですが、“撃針を鋭く研ぎ澄まし”とか“照星を削り落とし”なんて描写が入っているのにもかかわらず、このグリップ・セーフティーの処理が書かれてい無いとは、なんとも不自然です。

              これは、「フレミング氏はグリップ・セーフティーと云う機能がある事を知らなかった」と、解釈するのが正しいと思います。

              この様に推察すると、フレミング氏による拳銃についてのチグハグな記述の説明が付きます。

             

              読者諸兄よ、改めてVol.46『原作紹介/ドクター・ノオ 解説編』 、 Vol.42『原作紹介/ダイヤモンドは永遠に 解説編の【銃(Gun)】についての記述を再読頂きたい。

              さすれば、こんな調子で書かれた「ベレッタ.25口径」の描写など、まともに受け取ってはイカンのではあるまいか、と気が付くハズ。

              フレミング氏がいろいろと記した「ベレッタ.25口径」についての記述を鵜呑みにして、アレやコレやと候補モデルを詮索するとは、それこそ、「フレミング・マジック」に引きずりまわされるだけなのではないでしょうか。

             

              もしかしたらフレミング氏は、特定のモデルとしてM318あたりをイメージしていたのかもしれません。 が、グリップ・セーフティーがあってマニュアル(指動)・セーフティー(安全装置)が無いこのモデルでは、小説中の記述と合致しません。

              また、もしかしたら、M1919をイメージしていたのかもしれません。 しかし、それもグリップ・セーフティを備えておりますし、“3代目” “15年連れ添った”、とは合致しません。

              原作での「ベレッタ.25口径の記述を整理すると、候補モデルは数あれど、いずれも「アチラを立てればコチラが立たず」、です。

              こうして俯瞰してみると、イアン・フレミング氏は、単に「ベレッタ社のヴェスト・ポケット・ピストル」といったイメージで小説に登場させた、と思います。

              M318だかM1919だか知りませんが、その様な「ベレッタ社のヴェスト・ポケット・ピストル」をイメージして、小説に記したのではないか、と思っています。

              いえ、それどころか、一般的な小型ピストル=ヴェスト・ポケット・ピストルの代名詞として「ベレッタ.25口径」をジェームス・ボンドに持たせたのではないか、とさえ思っています。

             

              『原作紹介/〜』を綴るにあたって、改めて 原作を精読しました。 たとえ訳文とはいえ、書かれていた銃器についての記述を整理すると、「ボンドが愛用したベレッタ.25口径」とは、「特定のモデルは無かった」、「イアン・フレミング氏はあるモデルを選んでボンドに持たせていた、では無かった」、そう結論づけざるを得ないのでありました。

             

            *****

             

              さて、実際はどうであったのでしょうか。

              あの世へ行ったら、是非ともフレミング氏に問いただしてみたいと思っています。

            「フレミングさん、あなたがジェームス・ボンド小説を執筆なさっていた頃に売っていたベレッタ.25口径には、指動の安全装置は付いていなかったんです

            「そうなのかね? しかし以前に見かけたベレッタには付いていたと思ったが」

            「しかし、それは既に製造中止となっていたモデルなんです。 Mが新しく買ってボンドにプレゼントなんて出来ないんですよ」

            「そりゃ知らなかったな。 良い事を教えてくれたね、紅クン」

            「あなたの書いたベレッタの描写のせいで、世界中のガン・フリークが混乱しているのですが・・・」

            「ハハ・・・、そうだったのかね? そりゃ悪い事をしたね。 しかしね、紅クン、所詮は小説の中の事なのだよ。 全てはフィクションなんだ。 キミは銃に詳しい様だが、その点だけを取り上げて揚げ足取りをされるのは迷惑だね」

            「別に揚げ足取りをしているワケでは無いのですが、皆が困惑しているんです」

            「紅クン、君も007ファンを自称するのであれば、私の小説についてそんな重箱の隅をつつく様なことせんで、もっと小説自体を楽しんでくれなければ困るよ」

              と、こんなトコロじゃなかろーか、と思いますけど。 読者諸兄は、どう考察されますでしょうか。

             

             

             

            『007おしゃべり箱』 will return
            (次回掲載予定は『掲載一覧』に載せてます)


             

            月末の金曜日は『007おしゃべり箱の日です。
            お忘れなく


             

             

            『掲載一覧〔1st〕Vol.1 Vol.12 & 番外編(1)(48)


            『掲載一覧〔2nd〕Vol.13Vol.25 & 番外編(49)(91)


            『掲載一覧〔3rd〕Vol.26Vol.35 & 番外編(92)(129)

             

            『掲載一覧〔4th〕Vol.36 〜 & 番外編(130)

             

            があります。ぜひご覧ください

             

            【 P R 】
            番外編(4) ワルサーPPK in スカイフォールのチラシ
            番外編(5) ワルサーPPK in チラシ 2
            番外編(6) ワルサーPPK in チラシ 3
            番外編(7) PPKはモデルガン?!
            番外編(18) ワルサーPPK in スカイフォール
            番外編(19) 変身するボンドのPPK
            番外編(20) スクリーンでのワルサーPPK

            番外編(21) 図解!ワルサーPPK、PP、PPK/S (’13.09.26補足・改訂
            Vol.7  徹底図解!ワルサーPPK 前編
             〃    徹底図解!ワルサーPPK 後編
            番外編(30) ワルサーPPKを選ぶわけ
            番外編(32) ワルサーPPK with サイレンサー
            Vol.10 ワルサー vs ベレッタ ベレッタの逆襲
            番外編(41) ワルサーPPK in スカイフォール Part
            番外編(44) ある写真に写っているワルサーPPK/S
            Vol.15 図解!自動拳銃の作動メカニズム 前編
               〃   図解!自動拳銃の作動メカニズム 後編
            番外編(62) スコープサイトの誤解
            番外編(66) 告白5/コルトM1911A1・ガバーメントモデル
            番外編(73) スパイ手帳
            番外編(75) ベレッタの撃針
            番外編(79) アタッシュケース
            番外編(81) 組立式ライフル AR−7
            番外編(83) MGC の広告 in 1965
            番外編(88) MGC の広告 in 1965 Part
            番外編(108) 『スペクター』のチラシ Part2
            Vol.30 ジェームス・ボンドとPPK 考 第一部
                〃   ジェームス・ボンドとPPK 考 第二部
                〃   ジェームス・ボンドとPPK 考 付記
            番外編(116) 拳銃の持ち方、構え方
            番外編(122) 拳銃の持ち方、構え方 2

             

             

            【PR〜これまでの『原作紹介』】

             

            原作紹介/カジノ・ロワイヤル

            原作紹介/死ぬのは奴らだ

            原作紹介/ムーンレイカー

            原作紹介/ダイヤモンドは永遠に

            原作紹介/ロシアから愛をこめて

            原作紹介/ドクター・ノオ

            を掲載しています。 特別編(3)「007シリーズの原作リスト」もぜひどうぞ。

             

             

            【ふたたびPR】


            Vol.28 ジョージ・レーゼンビー 考
            Vol.31 ショーン・コネリー 考

            Vol.34 ロジャー・ムーア 考

            Vol.43 クレイグ=ボンド 考 があります。


             

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            ’15年公開の『スペクター』については多くの記事を載せています。
            番外編(90)ブロフェルドはハゲているか
            番外編(104)国際犯罪組織「スペクター」は復活なのか
            番外編 (118)『スペクター』のオーバーハウザーは何者なのか
            など他数の掲載がありますので、ぜひご覧ください。


             
            【 もひとつ P R /おすすめ映画の記事 】
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             ボンドガールについても数々の掲載があります。 先ずはボンドガール人気癸韻ダニエラ・ビアンキさんにスルドク切り込んだ、
            番外編(47)「ボンドガール/マドンナに等しかったと思うひと
            またジーン・セイモアさんについての
            番外編(56)「ボンドガール/清純なイメージだったと思うひと
            若林映子さんについての
            番外編(80)「ボンドガール/無念を思うひと」をどうぞ。


             
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             007=ジェームス・ボンドとくればマティーニですネ。 当然、話題に取り上げております。
            Vol.13『ウォッカ・マティーニ基礎講座』
            Vol.14『ジェームス・ボンドとウォッカ・マティーニ』 また
            番外編(65)「ヴェスパー・マティーニ」など、他にも数多くを掲載しています。


             
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             少ないですが、ボンドカーの話題もあります。 
            Vol.9『ボンドカー』また、
            番外編(38)「アストンマーチン DB-5 は復活するか」他、をどうぞ。
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            007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007

            007おしゃべり箱 Vol.47 『ビキニ Part2』

            0

              「007おしゃべり箱」は映画007シリーズについてのあれこれをおしゃべりしています。

               

              007おしゃべり箱 Talking BOX of 007

               

              Vol.47

               

              『ビキニ Part2』

               

              A View to A Bikini-style

               

              by 紅 真吾

               

                第20作『ダイ・アナザー・デイ』はでは、ハル・ベリーさん扮するジンクス嬢が海から上がって来るシーンを指して、第1作『ドクター・ノオ』のウルスラ・アンドレスさんヘのオマージュであると言われました。

                確かに製作者サイドも『ドクター・ノオ』でのハニー・ライダー嬢の登場シーンを意識していたと思います。

                ですが、コレ、チョッと違うのではないか、とずーっと思っておりました。

               

                まず水着の色。

                ハニー・ライダー嬢は。 対するジンクス嬢はオレンジ色でした。

               

                                             

               

                オレンジ色はねーだろ、が正直な感想。

                やはり『ドクター・ノオ』の時と同じく、であるべきだったのではないか。

                (第1作『ドクター・ノオ』におけるハニー・ライダー嬢のビキニについては、Vol.20『ビキニ』で取り上げておりますので、ぜひ参照下さい。)

                『ドクター・ノオ』でのアーシュラ・アンドレスさんの登場シーンの重要な点は、“いきなりビキニ姿の女性が海から上がって来る”であります。

                この時、主役は“ビキニの水着姿”であって、アーシュラ・アンドレスと云う女優さんでは無かった。 この点がポイント。

                

                ひるがえって、『ダイ・アナザー・デイ』でのジンクス嬢の登場シーンはどうだったでしょうか。

                水着の色がオレンジ色では、どう見たってハル・ベリーさんの水着姿にしかなりません。

                『ドクター・ノオ』のシーンをなぞるならば、ここはビキニの水着姿が主役になるような演出が必要だったのではないかと感じるのであります。

                この様な理由から、水着の色は白であるべきだったのではないかと。

                『ドクター・ノオ』と同じであるばかりで無く、褐色のお肌のハル・ベリーさんが白い水着を付ける事によって、ビキニの水着姿がひときわ目立つ演出になったのではないでしょうか。

                さすれば、ビキニの水着が主役と成り得まして、まさしく『ドクター・ノオ』へのオマージュになったと思います。

               

                そんな水着の色もさることながら、最大の問題点はそのデザインであると感じています。

                拙著Vol.20『ビキニ』で述べた通り、ウルスラ・アンドレスさんの登場シーンのポイントは、“当時としては弩ビキニでの登場”でありました。

                この衝撃こそが、“アーシュラ・アンドレスさんの伝説となった”、と言っても過言ではありません。

                となれば、海から上がろうが、プールから上がろうが、はたまた更衣室から出てこようが、とにかく“いきなり弩ビキニ”、といった演出こそが『ドクター・ノオ』へのオマージュではないでしょうか。

                が、『ダイ・アナザー・デイ』でのハル・ベリーさんが身に着けていたのは、今でのフツーのビキニ。

                タダの“オレンジ色のビキニ・スタイルの水着”です。

                全くインパクトがありませんでした。

                “いきなり弩ビキニ”、といった衝撃が無い以上、『ドクター・ノオ』のアーシュラ・アンドレスさんへのオマージュとは、とうてい言えません。

                この場面では、ただのビキニ、フツーのビキニでは無く、弩ビキニ”での登場が、オマージとしてふさわしかったと思います。

                では、現在での“弩ビキニ”と言ったらどういったデザインなのでしょうか。

               

                 コレぐらいではないでしょうか

               

               

                               

               

               

               

                               

                                    

                現在では、女性のお肌の露出度も当時とは格段に違いますから、これぐらいの布地面積でサイドはヒモでないと、一般的に“弩ビキニ”とは言えません。 

                忘れてならないのは、この上からナイフを吊った幅広のベルトを付ける、という事。 すなわち、ボトムの前はこれぐらい小さくないとベルトの下が全て水着になってしまって、フツーの水着と大差なくなってしまうのであります。

                股上が極端に浅い事、左右が極端に狭い事、コレが重要であると考えます。

                とにかく、『ドクター・ノオ』のオマージュとするからには、ハル・ベリーさんは、この様なヒモ・ビキニ姿で登場せねばならなかったのではないでしょうか。

               

              ***

               

                とは言ってもですねエ、上に掲載したビキニは現在では、フツーの弩ビキニ”です。

                浜辺で見かけても「おオ! スゲーねェちゃんだなー」と、いった程度。

                おもわずムクムクとしちゃいそうですが、でも、それでオシマイ。

                およそ“衝撃の弩ビキニ”とは言えません。

                では、目にした瞬間に「おおッ!」と身を乗り出してしまう程の衝撃の弩ビキニ”にとは、どの程度なのでありましょうか。

               

                  コレれぐらいでしょう

               

               

                                   

                                                                 

               

                                

               

               

                                

               

                これらは大胆デザインです。 次回作『BOND 25』でのボンドガールの女優さんは、こういった“衝撃の弩ビキニ”を身に着けての登場が必須であると考えます。

                この“衝撃の弩ビキニ”での登場によって、冒頭に記した“オマージュ”が完成するのではないでしょうか。 

                でもって、後ろは当然、この様に“ヒモ Tバック ”です。

              ウヒョ〜、プリプリのおしり                     

                とは言っても、将来ある若い女優さんに、こな様に“おしり丸出し”にしろってのはチョッと酷な気がしないでもありません。

                しかし、考えてみれば最近の出演女優の皆さんは、007映画の出演に合わせてPLAYBOY誌などで全裸(ヘア・ヌード)を披露していらっしゃいます。

                であればコレぐらいの大胆ビキニなどなんのその。 「喜んで着ます」と言った女優さんの人気爆発は間違い無し。

                ついでに007映画の人気急上昇も間違い無し。

                そもそも、大胆ビキニ=ヒモ Tバック とは必須条件であります。

               

                ウヒャ〜、プリプリがいっぱい、たまりましぇ〜ん♡ おっぱいもポロンッとしちゃいそ〜 

               

                ご自身のボディラインに対して常に研鑽を重ねている女優業のかたにとってみれば、このようなヒモ・ビキニ = おしり丸出し姿こそ、自身の研鑽・努力を発表するまたとないチャンスではないかと拝察致します。

                ま、私個人としては、研鑽・努力されたスリムな肢体よりも、ムチムチ・ボインボインのグラマー・ボディが好みですけど。

               

              ***

               

                ところが、世には〜っと大胆なビキニがある様です。

               

                   それが、コチラ

               

                    

                               

               

               

                                 

               

                                                    

                これらこそまさしく、“弩ビキニ”です。 俗に“極小ビキニ”とか、 “マイクロビキニ”、などと呼称されている様です。

                その呼び方はともかく、もはや“水着スイムウェアー”とは言えません。

                こんなので泳いだら、ポロンとかペロンとかスルンとか、してしまいます。

                “ビーチウェアー”と区分すべきでしょう(布地の面積が極めて小さいにもかかわらず“ウェアー=衣類”と呼ぶのは抵抗がありますけど)。

                いずれにしても、機能性を無視して“隠すべきトコロを最小限に隠した弩ビキニ”です。

                とにかく、ジェームス・ボンドの周りで..プールサイドなどでたむろするチョイ役のモデル・女優さん方たちにとっては、この隠すべきトコロを最小限に隠した弩ビキニで出演=“出世チャンス”であります。

                次回作では、製作側としても新進気鋭のモデル・女優さん達にこういった“衝撃の弩ビキニ”で登場させて世間の注目を促すチャンスの場を提供する事こそ、後進の育成と云う映画界への貢献がなされるのでは、と考えます。

               

              ***

               

                通常、“ヒモ・ビキニ”と言ったら上に載せた様に、“布地部分がヒモでつながっているビキニ”です。

                ところが、世には“ほとんどヒモ”、“ほぼヒモ”、と究極に向けて進化した“ヒモ・ビキニ”がある様です。 これこそ“真のヒモ・ビキニ”と呼べましょう。

               

                    それが、コチラ

               

               

                               

               

               

                               

                                         ドヒャ〜、かなりの衝撃。

                                               

                “超・弩ビキニ”です。 まさに“真のヒモ・ビキニ”でありましょう。

                この様な“超・弩ビキニ”であればビーチで、じゃなかったスクリーンで注目を集める事はまちがいありません。

                やはり、メインのボンドガールの女優さんは、“衝撃の弩ビキニ”で出演。 プールサイドガールの皆さんは、この様な“超・弩ビキニ”で出演。 と、これこそ007シリーズの王道ではないでしょうか。

                えッ、あたしスケベですか。

                そうではありません。 007映画自体が、隠れたスケベ性を持っているとは、数々の拙著で検証してきました。

                ヒワイな妄想をかき立てられた高校生は、映画館を出るとガールフレンドの胸や腰を、ついジロジロと見てしまいます。 妙齢の女性はこういった我々男子の視線には敏感だ。

                かくして、純情な高校生の恋は風前の灯と化す。

                それこそが007シリーズの王道でなければならないのです。

               

              ***

               

                ところが、世には“水着の常識を覆す”過激なビキニがありました。

                水着がビーチウェアーとなり布地面積がどんなに極小となろうとも、“透けない”は常識であると思っていました。

                やっぱ、透けちゃマズイでしょ。 しかしその常識を覆すのが“透けヴァージョン”なのであります。

               

                        それが、コチラ

               

                                                     

                                    

              スゴくエッチ。 スゴくヒワイ。 でも、スゴ〜く楽しい

              ***

               

                しか〜しッ!、世にはもっとスゴイ“常識を覆すビーチウェアー”がありました。

                上記した“透けちゃうビーチウェアー”は、「透けて見えちゃってもイイ」です。

                で、「見えちゃってもイイ」から、「見せちゃうと進化したビーチウェアー、すなわち、“大事なトコロを隠さない(みせびらかす?)ビーチウェアーです。

               

                  それが、コチラ

                                                                             

                                     

                                    

                                    

                                                                                                                       

               

              コチラは真ン中がファスナーになってまして、最小限に隠すかオープンにするか、この様にお好み次第になっております。

               

                      

                          キャ〜、かなり過激。 チョー過激です。

                 こういったデザインはこまで来るとビキニと言うよりも、ボディアクセサリーと呼ぶに相応し

                 い様に思います。

                 しかし、アクセサリーの類いは装飾品としての自己主張があります。 

                 が、これらはの場合は多少の自己主張はありましょうが、その目的はあくまで主役の引き立て

                 役にしか過ぎません。

               

                もー、ビックリ仰天。 

                この様な“透けヴァージョン”“見せちゃうヴァージョン”外国のビーチでは“あり”でしょうが、我が国では“あえな〜い”です。 

                日本でこんなカッコウをしていたら、お巡りさんに捕まってしまいます。

               砂浜での弩ビキニは大歓迎なのですが、どうもこの“隠すべきトコロを隠さないビーチウェアー”はヒワイ感が拭い切れません。

                でも、スゴ〜く楽しい

                そうです。 この様なヒワイ感タップリのどこがイケナイのか。 

                「ワイセツのどこが悪いッ!」は故・大島渚監督の有名なセリフでもあります。

               

                いずれにせよ、これらはまさしく“過激ビキニ” 。

                次回作でボンドガールもしくはプールサイドガールのお嬢さんたちが、この様な“過激ビキニ” でご登場されたならば、かなりの衝撃、かなりの話題作となる事は間違いありません。

                この衝撃があってこそ、『ドクター・ノオ』のウルスラ・アンドレスさんのオマージュが完成するのではないでしょうか。

                さて、 読者諸兄は如何にお考えでしょうか。

               

              ***

               

                    

               

               

                   

               

               

                   

               

               

                                  

                       

               

                          【 以上、あっちゃこっちゃから画像をお借りしました

               

               

               いや〜、実に皆さん楽しそうです。 ヒワイ感は感じられません

                それはともかく、若い読者諸兄が新婚旅行で訪れたビーチで、この様な姿のお嬢さん達に遭遇しない事を祈ります。

                男子であればどんな朴念仁であろうとも、こんなお嬢さん達がビーチを歩いていれば、当然のごとく目が追ってしまいます。

              「アンタッ、どこ見てんのよッ」と、なりまして、成田離婚にもなりかねません。

                旅行先でグラマー・ボディーが目に入る事もありましょう。

                それでも、決して視線を泳がせたりせず、新妻の笑顔だけを見つめる。

                これは新郎の責務です。

                しかし、こりゃ拷問ですな

               

               

              『007おしゃべり箱』 will return

               

              月末の金曜日は『007おしゃべり箱の日です。

              お忘れなく

               

              『掲載一覧〔1st〕 『掲載一覧〔2nd〕 『掲載一覧〔3rd〕 『掲載一覧〔4th〕

              があります。ぜひご覧ください。

               

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              Vol.4  18歳未満の閲覧を禁ず

              番外編(39) ボンドガール/続・Vol.4 18歳未満の閲覧を禁ず
                          第10作『私を愛したスパイ』〜バーバラ・バックさん

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              番外編(68) 007はスケベの番号

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              Vol..45 ビキニ Part2

               

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              原作紹介/カジノ・ロワイヤル

              原作紹介/死ぬのは奴らだ

              原作紹介/ムーンレイカー

              原作紹介/ダイヤモンドは永遠に

              原作紹介/ロシアから愛をこめて

              原作紹介/ドクター・ノオ

              を掲載しています。 特別編(3)「007シリーズの原作リスト」もぜひどうぞ。

               

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               ボンドガールについても数々の掲載があります。 先ずはボンドガール人気癸韻ダニエラ・ビアンキさんにスルドク切り込んだ、
              番外編(47)「ボンドガール/マドンナに等しかったと思うひと
              またジーン・セイモアさんについての
              番外編(56)「ボンドガール/清純なイメージだったと思うひと
              若林映子さんについての
              番外編(80)「ボンドガール/無念を思うひと」をどうぞ。

               
               
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               007=ジェームス・ボンドとくればマティーニやワルサーPPKですネ。 当然、話題に取り上げております。
              Vol.14『ジェームス・ボンドとウォッカ・マティーニ』 また
              Vol.10『ワルサー vs ベレッタ ベレッタの逆襲』
              など、他にも数多くを掲載しています。
              【お知らせ】

              『大人の逸品|BAR CINEMA〜この映画に乾杯!』を紹介致します。 花の銀座で「バー・エヴィータ (BAR EVITA)を経営なさっている亀島延昌氏のブログです。 執筆者はプロのバーテンダーさんです。 ぜひ、ご覧下さい。

              『KarmannFishにうってつけの日』を紹介致します。 当『〜おしゃべり箱』と違ってヒネクレたところが無い、素直な楽しい記事が満載です。 ぜひ、ご覧下さい。

              『英語学習お助けサイトを紹介いたします。 「映画/ドラマで学ぶ」のカテゴリーでは、基本的なフレーズを基本に戻って解説されています。

              For James Bond 007 lovers Only』を紹介致します。
              この様に、さまざまなマニアが多くいらっしゃいます。 ぜひ拙著と合わせてご覧ください。


              『ジェームズ・ボンドの部屋&007の武器庫』を紹介致します。
               各コーナー共に写真が豊富ですから、読んで、見て、楽しい内容となっています。 ぜひご覧ください。
              007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007

              007おしゃべり箱 コメント御礼 (8)

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                「007おしゃべり箱」は映画007シリーズについてのあれこれをおしゃべりしています。

                 

                007おしゃべり箱 Talking BOX of 007

                コメント御礼(8)

                 

                by 紅 真吾

                 

                  カルマン・フィッシュ 殿

                  拙著ブログにコメント頂き、ありがとうございます。

                  読者諸兄からのコメントは、涙が出るくらいウレシイです。

                  カルマン・フィッシュ殿からは、3月30日に掲載の『Vol.46−8 原作紹介/ドクター・ノオ』について、下記のコメントを頂戴しました。

                 

                カルマン・フィッシュです。
                お世話になっております。
                さきほど『原作紹介/
                ドクター・ノオ』を完読いたしました。
                前回も大作でしたが、更にボリューム・アップされていたことにまず驚かされました。
                その力量に圧倒されました。

                嬉しかったのは、前回の「ロシアから愛をこめて」の一件を鑑み、Mより銃をベレッタからワルサーに替えるようボンドに指示が出る、あの場面について詳細に記述があったことです。
                1ヶ月前に読んだ続きでしたので、連載小説のように「待ってました」という気分を体感いたしました。
                例の毒ナイフ靴にフグの毒が仕込まれていたこと、フランス人(←マティス?)が人工呼吸で的確な応急処置をしたことでボンドが九死に一生を得たことなど、映画では描かれていない背景を知ることができまして感謝いたします。

                ハニー・ライダーは私の知っているハニーより遥かに野生児でして、あの美しきウルスラ・アンドレスの姿は脳裏に一度も現れませんでした。
                小説のハニーは親しみやすく、蟹の生態を熟知している生物通で、賢く、勇敢で、とてもチャーミングな女性でした。
                百科事典を読んでいるというコトは既に知っておりましたが、ただ読んでいたワケではなかったんですね。

                一方、ボンドも誰というわけでもないのですが、少なくともショーン・コネリーは消え、小説固有のキャラクターとして、私の中で活躍しておりました。
                紅さんの原作シリーズを読んでいていつも思うのですが、毎回傷だらけになりますよね。疲労困憊もしますしね。
                文字通り「体を張っている」ヘヴィな職務であるので、「がんばれ〜」と言いたくなります。
                おかしいですよね?
                私がボンドに「がんばれ〜」なんて・・・
                読み手それぞれにそれぞれの解釈はあると思いますが、もう、勝手に世界を変えて楽しんでおります。
                ごめんなさい m(__)m

                しかしヒール役のドクター・ノオはというと、不思議なことに最初から最後までワイズマンでありました。
                映画で見たジョセフ・ワイズマンのインパクトが強すぎたからでしょうか?
                (はじめて見た時、怖かったし・・・)
                小説において意外な最期だったのにもかかわらず、また決してフレミングがワイズマンに当て書きしたキャラクターでもないのに、ノオ=ワイズマンが方程式になっております。

                とまぁ、おかげさまで、午後はカフェで充実した読書タイムをとることができ、よい休日となりました。
                本当にありがとうございました。

                 

                  重ね重ねお礼申し上げます。

                  さて、カルマン・フィシュさんがおっしゃる通り、特に冒頭のMの部屋でのシーンは、書き込んでしまいました。 お楽しみ頂けて何よりです。

                  が、当初の予定ではサラッと書き飛ばすつもりでした。

                  Mが語るピーター・スタイン博士の“人間が体から取り除かれても生きていかれる部分のリスト”のくだりは、完全にスキップするちもりでした。

                  ところが、そりゃマズイ、と気が付きまして、イロイロと一歩踏み込んだ記述となってしまいました。

                  何故マズイのか。

                  これは解説編でも記しましたが、当ストーリー紹介が終わった際にご説明致します。

                 

                  実を言うとですね、“そりゃマズイ”と思って書き込まざるを得なかった箇所が多くなってしまったものですから、“残しておきたいナ”と思っても割愛した箇所が多くあります。

                  その1つが、カルマン・フィシュさんが記された“九死に一生”の箇所です。

                  原作でのジェームス・モロニー卿のセリフは、

                「奇蹟だぜ。 何よりも感謝するのは、一緒にいたフランス人だね。 倒れているあの男を見つけて、溺れかけた人間にやるように人工呼吸をやらせたんだ。 医者の来るまで、どうやら肺の機能を持ちこたえさせたんだね。 運が良かった事には、医者がまた南米で仕事をした事のある男でね、クラレの毒と診立ててそのつもりで手当てをしたんだ。 しかしそんな偶然は百万に1つというほどないぜ。 それはそうと、あのロシアの女はどうなった?」 でした。

                  この中の、駆け付けた医師の診立てを入れる事で、まさに“九死に一生”感が出るではありませんか。

                  でも、拙著では割愛しました。

                  ただでさえ長くなっちゃってましたから、編集の段階で「どこか1行でも削れるトコロはないかいな」、と添削し、泣く泣く削ったのでありました。

                  と、ゆーワケでェ、残したかったけれどもはしょった部分は何箇所もあります。

                 

                  また、悪役の描写は全くスキップです。

                  フレミング氏が書いた悪役は、誰もが皆“魁偉”と表現するに相応しい風貌です。

                  当初は、こりゃ書かんとマズイだろう、と思ったのですが、この形容だけで5〜6行は費やしてしまいそう。

                  ま、悪役については映画によるイメージが先行しておりますから、あえて原作の容姿を塗り重ねる必要も無いだろう、と勝手に判断した次第です。

                 

                  次回の『原作紹介』は、「ゴールドフィンガー」です。

                  掲載予定は6月30日(金)。 (まだ草稿は半分しか上がっておりませんが)

                  次回4月28日の『〜おしゃべり箱』は、『Vol.47 ビキニ Part2』です。

                  今までとはチョット趣向を変えております。 ご期待下さい。

                  文末になりましたが、カルマン・フィッシュ殿のご健勝とますますのご活躍をお祈り申し上げます。

                 

                 

                『007おしゃべり箱』 will return

                 

                 

                『掲載一覧〔1st〕 『掲載一覧〔2nd〕 『掲載一覧〔3rd〕 『掲載一覧〔4th〕

                があります。ぜひご覧ください。

                 

                007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007007


                007おしゃべり箱 Vol.46−1 『原作紹介/ドクター・ノオ』

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                  「007おしゃべり箱」は映画007シリーズについてのあれこれをおしゃべりしています。

                   

                  007おしゃべり箱 Talking BOX of 007

                   

                  Vol.46-1

                   

                  『原作紹介/ドクター・ノオ』

                  Ian Fleming’s Dr. No

                   

                  【ストーリー編 1/8

                   

                  by 紅 真吾

                   

                    007号=ジェームス・ボンドが活躍する原作小説の6作目『ドクター・ノオ』(1958年)の紹介です。

                    特別編(3)『原作リスト』で記した通り、「読んでいない人も、読んだ気になれる」、「読んだのははるか昔で内容を忘れてしまった人も、記憶が甦る」、を目指して、あらすじを詳しく踏み込んでいきます。

                   

                   

                  6時きっかり、夕陽はブルーマウンテン連山の彼方に最後の黄色い夕映えを残して沈んだ。ジャマイカのメインストリートであるリッチモンド通りにも紫紺の影が覆いはじめてきた。

                    リッチモンド通りの突き当りのT字路の向こう側には、総督官邸が建っている。 すなわちこの通りは、ジャマイカ最高の人の邸宅へ向かう道なのだった。

                    このT字路の手前に建っているがっちりした2階建ての建物がクィーンズ・クラブで、ジャマイカのみならず、カリブ海一帯で最高の料理と酒が揃う社交の中心なのであった。

                    この時刻、クラブの前の通りにいつも決まって4台のクルマが並ぶのに気が付く。 毎夕きちんと5時に集まって真夜中までブリッジをやる4人組のクルマだった。

                    いま歩道に並んだ順にその持ち主をいうと、そのクルマはカリブ海防備隊の准将、キングストンきっての有力弁護士、キングストン大学の数学教授、最後が英国海軍の退役中佐にしてカリブ海域調査官−ずばりと言えば英国秘密情報部の地区責任者ストレングウェイズの黒のサンビーム・アルパインだった。

                   

                    6時過ぎ、この静かなリッチモンド通りを3人の盲目の乞食が歩いてた。

                    3人共チグロ−中国系ニグロ−で、先頭の男がブリキのコップを前にしながら白い杖で歩道の縁をコツコツとやっている。 2人目は先頭の男の肩に右手をかけて、3人目も右手を前の男の肩にかけ、そうしてひとかたまりになって4台のクルマの方へと歩いて来ていた。

                    クラブのカード室ではストレングウェイズが、「毎度の事ですまないが、20分ほど失敬するよ」と、言って席を立った。

                  「早く切り上げてくれよ。 こっちに調子がついてくると、君は決まって水を差すんだからね」、と准将。

                    残った3人はイスに座り直すとウェイターを呼んで、それぞれに酒を注文した。

                    毎晩6時15分になると、ストレングウェイズはオフィスで電話をかけに戻ってしまうのだ。 まったく興ざめな話しだが、ストレングウェイズはクラブでも人気者であったので、3人は辛抱していた。

                    彼の中座が20分以上になった事は無く、その間の飲み物は彼の奢りと云う事で話はついていたのである。

                    確かにこの時刻は、ストレングウェイズにとっては一番大切な時刻だった。

                    ロンドンの本部と日に1回の定時連絡をとる時刻なのである。

                    受け持ちの他の島へ調査に出かけたりして連絡を休む場合も、必ず前日の連絡で休むと断りを入れなくてはならないのだった。

                    6時きっかりに彼が無線に出ないと、7時に“青信号”と呼ばれる2度目の連絡が入る。 7時半には最後の“赤信号”が入る。 それでも応答が無い場合は、“緊急事態”となってロンドンの直接管理機関である第3課が、すぐに異常の有無を確かめる仕事に取り掛かるのである。

                    たとえ“青信号”の時に無線に出ても、筋の立った理由が認められないとその情報部員にとっては大きな黒星となる。 ロンドンでの無線連絡の時間割は、全世界の情報部員を相手に恐ろしくぴったりと詰まっているのだった。

                    ストレングウェイズはこれまで赤信号はもとより青信号を受ける様な不始末をした事は無いし、これからもそんなヘマをするつもりは無かった。

                    ストレングウェイズは毎晩6時15分にはクィーンズ・クラブを出て、キングストン港を見下ろすこじんまりとしたバンガローへとクルマを飛ばすのだった。 奥の事務室では、ミス・トルーブラッドが書類キャビネットに見せかけた無線機の蓋を開けているだろう。

                    彼女は表向きはストレングウェイズの秘書と云う事になっているが、実は元英国海軍婦人部隊の将校で、彼の右腕とも言うべき情報部員である。 

                    彼女は既にイヤホーンを付けて、14メガサイクルで最初の呼び出し符号のWXNをモールス信号で叩いているに違いない。

                    これが鋼鉄の様にゆるぎない日課なのだった。

                    しかし、こうした判で押した様な性格な行動は、敵に読み取られた場合には致命的な結果を招くものである。

                   

                    締まった体で背の高いストレングウェイズは、クィーンズ・クラブのマホガニー貼りの玄関を足早に通り過ぎると、道路に駆け下りた。

                    彼の頭の中は、先ほどゲームで作った手の快い後味しかなかった。

                    差し当たっての事件と云えば、Mから命じられた調査で中国人社会に探りを入れた結果、奇妙な手掛かりが浮かんできた程度だった。 それすらもまだ手掛かりの気配、と云う程度であるが。

                    ストレングウェイズの視界の隅に3人の乞食が入った。

                    クルマにつく前にすれ違いそうだったので、ストレングウェイズはポケットの中の小銭を探った。 指先でそれがフロリン銀貨である事を確かめると、銀貨を出した。

                    おかしいぞ、3人共チグロだ!  そう思いながらストレングウェイズは、銀貨をブリキのコップに落とした。

                  「おありがとうございます旦那様」 先頭の男が言うと、後ろの2人も声をそろえた。

                    ストレングウェイズの手には、既にクルマのキーが握られていた。 彼は背後のステッキが歩道を叩く音が止んだのに気が付いた。 しかし、もう手遅れだった。

                    3人の乞食は一斉にふり返り左右に広がると、ボロの下からサイレンサーを付けたオートマチックを取り出し、訓練の行き届いた正確さでストレングウェイズの背中を撃った。

                    1人は肩の間、1人は腰、1人は骨盤。

                    3つの銃声はほとんど同時で、ストレングウェイズは蹴とばされた様に歩道に倒れ込んだ。

                    6時17分。 タイヤを軋ませながら1台の霊柩車がT字路からリッチモンド通りに走り込んでくると、歩道に固まって立っている3人の前で停まった。

                    後ろの2枚の扉が開く。 3人はストレングウェイズの死体を中の棺に押し込むと、霊柩車に乗り込んだ。

                    同じ中国系ニグロの運転手が、心配そうにふり返って見る。

                  「さあ、早く出せ!」 殺し屋の中で一番図体の大きい男が叫んだ。 男は腕時計をのぞく。 6時20分。 計算通りの殺しだった。

                   

                  「WWWこちらWXN・・・WWWこちらWXN・・・」 メリー・トゥルーブラットがモールス信号のキーを叩いた。 6時28分。 1分遅刻だ。 黒のサンビームのオープンカーがすっ飛んで来る様子を思って、トゥルーブラットは笑みをこぼした。

                  「すまん。 あのボロ車め、なかなかエンジンがかからなくってね」 とか、「今頃はクルマのナンバーが警察に通報されてるぜ。 かなり飛ばしてきたからね」 とか言いながら、隣りのイスに腰を降ろすだろう。

                    6時半、いよいよだ。 しかし、やっと廊下に足音が聞こえてきた。

                  「WXNこちらWWW。 WXNこちらWWW。 感度はどうか? 感度はどうか?」

                    ロンドンの呼び出しがイヤホーンから流れた。

                    彼女はキーを叩いた。 「感度良好。 明度良好」

                    その時、彼女の背後で何かがはじける音がした。

                    トゥルーブラットが振り返ると、戸口に大柄な黒人が立っていた。 銃口に太い筒の付いた拳銃を持っている。

                    彼女は悲鳴を上げようと口を開けた。

                    男は相好をくずして笑うと、楽しそうに拳銃を上げて彼女の左胸に3発撃ち込んだ。

                    トゥルーブラットはイスから崩れ落ちた。

                    殺し屋はいったんドアから出ていったが、今度は発火剤の箱とテイト&ライト商会のマークの付いた砂糖袋を持って来た。

                    男は袋に死体を詰め込むと、書類やカーテンを部屋の真ん中に積み上げる。 そして、発火剤をその山に押し込んで火を付けた。

                    男は死体の入った袋を軽々と担ぐと、玄関を通って表に出た。 表に停まっていた霊柩車の後ろのドアが開く。 中の2人が袋を受け取り、棺の中のストレングウェイズの上に押し込んだ。

                    最初の炎が2階の窓に見え始める頃には、霊柩車はモナ貯水池へ向けて走り出していた。

                    2人の死体が入った棺は、貯水池の水深50尋の底へとそっと沈められるのだ。

                    こうして僅か45分で英国情報部カリブ海支局は、いっさいが完全に消滅してしまうのだった。

                   

                  *****

                   

                    3週間後のロンドン。 3月はガラガラ蛇の様な嫌な天気でやって来た。

                    1日の夜明けから凍り付くような氷雨で、強い風が追いかけてくる。

                    朝の氷雨はロンドンの街をたたき起こし、冷たい風は勤めに出ていく人達の顔に赤いブチを作った。 実に嫌な天気で、誰もが愚痴をこぼしていた。

                    日ごろ天気などに頓着しないMまでもが、今日ばかりは嫌な天気だと認めていた。

                    何も書いていないナンバープレートを付けた旧式の黒いシルバー・ロールスが、リージェント・パークの背の高い建物の前に止まった。

                    ぎこちなく歩道に降り立ったMの顔に、あられが散弾の様に降りかかる。

                    Mはクルマを回って運転手の窓のそばへ行った。

                  「スミス、今日は地下鉄で帰るからクルマはいらん。 この天気ではクルマを走らせてもつまらん。 戦争中のあの囮船よりもひどいぞ」

                    機関兵あがりのスミスは嬉しそうに笑顔を見せた。

                  「アイアイ・サー。 ではそうさせて頂きます」

                    スミスは初老のMが建物の中に入っていくまで見守ると、クルマを出した。

                    Mはエレベーターで9階に上がると、厚い絨毯を敷いた廊下を通って自分のオフィスへと向かった。

                    部屋に入るとコートとマフラーを脱いで、花柄模様の絹のハンカチでごしごしと顔を拭く。 そしてデスクの前に腰を降ろすと、インターフォンのスイッチを入れた。

                  「ミス・マネペニー、出てきたよ。 暗号電報があったら持って来てくれ。 それからジェームス・モロニー卿に電話してくれんか。 あと、主任に007とは30分以内に会う、と伝えてくれ。 それから、ストレングウェイズの書類を持って来てくれ」

                    Mは、金属的な「はい」と言う返事を待ってからスイッチを切った。

                    イスに座り直すとパイプを取り出して、何か考え込みながらタバコの葉を詰める。

                    秘書のマネペニーが書類の束を持って来てもMは顔を上げなかった。

                    インターフォンに黄色の光がまたたいた。 Mは受話器を取り上げた。

                   

                  「ああ、ジェームス卿か? 5分ほど時間をさいてくれんか?」

                  「君が相手なら6分にまけるよ」 電話の向こうで高名な神経学者がくすくすと笑った。 「また閣僚の誰かの精神鑑定をしろ、とでも言うのかね?」

                  「今日はそうじゃ無い」 Mはむっと苦い顔をした。 海軍上がりのこの古武士は、政府に対して敬意を払っている。

                  「君の治療を受けていたうちの男の事だ。 あの男はもう仕事に使えるかな?」

                   相手はしばらく黙っていた。 今度は医者らしい分別くさい声になる。

                  「そう、肉体的にはピンピンしてるし、後遺症も残らんはずだし・・・ただねえ、M、あの男はひどい緊張状態を経てきたんだ。 だいたい君のところは人使いが荒すぎるぞ。 最初は楽な仕事をあてがうとかわけにはいかんのか?」

                    Mは乱暴な口調で応じた。 「彼が給料を貰えるのは、情報部の仕事をしているからなんだ。 まだ仕事に使えるのかどうかは、私が判断するよ。それに、神経までやられたのも、なにもあの男が初めてじゃないからね。 ところで、今の話しによると、体の方はもう充分らしいな」

                  「しかし、苦痛というものは第三者には見当がつかんものだよ。 どこか体の一部が壊れていないからといって、一概に軽く考えるのは・・・」

                  「そんな事は十分に承知しているよ」 Mはモロニー卿の言葉をさえぎった。 そもそもはボンドがヘマをやったその報いなのだ。

                    Mは部下の扱いに他人から指図されるのが大嫌いだった。 たとえ相手が世界一流の高名な医者だとしても、だ。

                  「ピーター・スタイン博士を知っているかね?」 Mはだしぬけに言った。

                  「いや、知らないな。 何者だね?」

                  「アメリカの医者でね、彼が書いた本の中に人間が体から取り除かれても生きていかれる部分のリストが出ていた。 メモを取っておいたんだが読んであげよう。 いいかい、胆嚢、扁桃腺、虫垂、腎臓の片方、肺の片方、4〜5クォートある血液のうち2クォート、肝臓の2/5、胃袋の大部分、23フィーある腸のうち4フィートまで、脳の半分」

                    Mはここで一息ついた。

                    電話の向こうから、あきれた声が聞こえてきた。

                  「腕1本とか脚1本とかも書いてなかったかね? いったい、どういうつもりだか解らんが」

                  「私の言いたいのは、うちの男はこれに比べればかなり軽いという事だよ」

                    ここでMは口調をやわらげた。

                  「しかしその事で議論するのはよそう。 実は私が考えているのは、彼をちょっと休ませてやろうと云う事なんだ」

                    Mは雨が滝の様に流れる窓に視線を向けた。

                  「とにかく休暇仕事みたいなもんでね、うちの人間が2人行方不明になったんで例の男をその調査にやろうと思ってるんだよ。 陽光輝くジャマイカへね」

                  「それはいい考えじゃないか。 しかしね、人間の勇気というものには限度があるからね」

                  「そうかもしれんね」 Mはこんな話しはもうたくさんだと思った。 「だから外国にやろうと思ってるんだよ。 それはそうと、例のロシア女があの男に注射したのが何だか解ったかい?」

                  「昨日やっと解答があった」 モロニー卿も話題が変わって、ほっとした様子だった。

                  「調べるのに3ヶ月かかったよ。 つきとめたのは熱帯医学研究所のやつでね、フグのテトロドキシンという毒だった。 中枢神経が麻痺するんだ。 一発打たれただけで運動神経が麻痺して呼吸筋肉も動かなくなってしまう」

                  「よく助かったな」

                  「奇跡だよ。 その場に居たフランス人に感謝するんだね。 医者が来るまで人工呼吸をやって肺の活動を持ちこたえさせたんだ。 それはそうと、あのロシア女はどうなったんだい?」

                  「ああ、死んだよ」 Mはそっけなく言った。 「どうもありがとう。 それから、この患者の事は心配いらんよ。 ゆっくりと現場に慣れさせていくつもりだから」

                    Mは電話を切ると、冷たい無表情な顔に戻った。 次に、何冊もある暗号電報のファイルに目を通していく。 いくつかにはメモを書き入れ、ときおりどこかの部署に電話をかけたりした。

                    そうして目を通し終わると、ファイルの山を既決の箱に放り込んでパイプに手を伸ばす。

                    目の前に残っているのは、表紙に“カリブ海支局 ストレングウェイズおよびトゥルーブラット”と書かれたファイルだけだった。

                   

                    インターフォンのランプが点滅した。 「何だね?」

                  「007が参りました」

                  「こっちに寄こしてくれ。 それから兵器係に5分以内に来る様に言ってくれ」

                    ジェームス・ボンドがドアを開けて入ってきた。 デスクの前の、Mと向かい合ったイスに腰を降ろす。

                  「おはよう、007」

                  「おはようございます」

                    静まり返った室内には、Mのパイプのジュージューいう音と、窓をひっかく氷雨の音がハーモニーとなっていた。

                    病院から病院へとたらいまわしにされていた何か月もの間、ボンドが心に思い描いていたMとその部屋だった。 この部屋に呼ばれる事こそ、ボンドが長い間待ち望んでいた回復のシンボルだったのだ。

                    ボンドは、雲の様なタバコの煙ごしにMの灰色の瞳を見つめた。 今度の仕事は何だろう? 以前の様な数々の修羅場をくぐる様な仕事だろうか? それとも、あっさりとどこかの部署の書類仕事に回されてしまうのだろうか? それとも、Mはボンドが仕事に戻れるのを待って、何か素晴らしい事件を温めておいてくれたのではないだろうか?

                    Mはマッチ箱をデスクの上に放り出すと、イスの背にそっくり返った。

                  「どうだ? 退院できて嬉しいか?」

                  「ええ、嬉しいです。 それに張り切ってます」

                  「この前の件について何か言いたい事はあるか? 私が査問を命じたから、主任が君にいろいろと聞き取りしたと思うが、他に何か付け加える事はないか?」

                   Mの声は冷ややかだった。 ボンドは不安な気持ちになった。

                  「何もありません。 あの女を近づけたのが失敗でした。 今後は気を付けます」

                    Mは両手をデスクの上に拡げた。

                  「その通りだ」 Mの声は穏やかだったが、嵐をはらんでいた。 「確か拳銃が引っ掛かって間に合わなかったそうだな。 007、失敗のもとはそこだぞ。 ダブル0の番号を持つ諜報員がそんな失敗をするとは、もってのほかだ。 あきらめて並みの勤務に戻るか?」

                    ボンドはぎょっとして恨めしそうにMの目を見つめた。

                    ダブル0の番号は必要とあらば人を殺してもよい許可証で、大変な名誉なのだ。 この番号のおかげで、ボンドは大好きな危険な仕事ばかりをやれるのだ。

                  「いえ、嫌です」

                  「では君の装備を変えねばならんな。 査問委員会で判明した事の1つだ。 私も同じ意見だよ」

                  「あの拳銃は使い慣れてるんです。 この前みたいな場合は、誰でもああなると思います」

                    ボンドは強情をはった。

                  「私はそうは思わん。 査問委員会もそうだ。 だからこれは決定なんだ。 問題は替わりに何を使うか、と云うだけの事だ」

                   

                   Mはインターフォンの上にかがみこんだ。 「兵器係は来とるか? すぐ寄こしてくれ」 Mはまた座り直した。

                  「007、君は知らんだろうが、ブースロイド少佐は小火器については世界的な権威なんだ。 ここで彼の話しを聞こう」

                    ドアが開いて背の低い華奢な男が入って来た。 あまり顔を合わせた事は無いが、澄んだ灰色の目には見覚えがあった。

                  「おはようございます」 と言った声は平板で感情が無かった。

                  「おはよう。 ちょっと訊ねたい事があるのだがね」 Mはなにげなく声をかけた。 「ベレッタの.25口径を君はどう思う?」

                  「婦人物ですね」

                   Mはボンドに向かって眉を上げて見せた。 ボンドもかすかに笑顔を浮かべる。

                  「ほほう! それはまた、なぜだね?」

                  「殺傷力が弱いですよ。 もっとも、扱いは楽ですがね。 ちょっと恰好もしゃれてるし、お解りでしょう? ご婦人うけするアクセサリーですよ」

                  「サイレンサーを付けたらどうだ?」

                  「もっと威力が弱くなりますね。 それに私はだいたいサイレンサーと云うのは好かんですね。 重くてかさばります。 ベレッタにサイレンサーを付けるなんて、私には勧められませんな。 少なくとも仕事に使う場合は反対です」

                   Mは楽し気にボンドの方を向いた。 「007、何か言う事はないか?」

                  「承服できませんよ。 私はこれまで15年間ベレッタ.25口径を使ってますが、撃ち損じた事は1度もありません。 仕方なしに他の大型拳銃を使った事がありますが、接近して撃ったり目立たない様に持ち歩くには、今のベレッタが一番です」

                  「だがな007、問題は慣れだけだ。 すぐに新しいやつに愛着を覚える様になるさ。 気の毒だが私の肚はもう決まっとるんだ。 ちょっと立ってみたまえ。 兵器係に君の体格を見せるんだ」

                    ボンドは立ち上がって兵器係と向かい合った。 ブースロイド少佐はまるで医者みたいな態度でボンドの体を眺めると、「拳銃を拝見」と、言った。

                    ボンドは上着の下から革紐を付けたベレッタを取り出した。

                    少佐はその拳銃を仔細に眺めると、デスクの上に置いた。 「ホルスターは?」

                    ボンドは上着を脱ぐと、鹿革のホルスターと付属品を外す。

                    少佐は手にしたホルスターを調べると、ベレッタの横にバカにした様な態度で投げ出した。

                  「もっとマシなものを装備できると思います」

                    ボンドは腰を降ろした。 仏頂面になるのを必死でこらえて、平然とMを見つめる。

                  「それで? 何を推薦する?」 Mはそんなボンドの態度を無視して少佐に質問した。

                    ブースロイド少佐は専門家らしい口調になった。

                  「実は今、小型拳銃を一通り当たってみたところですが、ワルサーPPK 7.65ミリを選びますね。 日本のM114、ロシアのトカレフ、ソーサーM38などより命中精度に劣りますが、引き金が軽いのと握りの後ろが張っているのが007の手加減に丁度いいでしょう。 それにワルサーの弾丸なら世界中どこでも手に入ります。 この点、日本やロシアの拳銃はダメですね」

                    Mはボンドの方に向き直った。 「何か言う事はあるかな?」

                  「いい拳銃ですね」 ボンドも認めた。 「しかし、ベレッタよりかさばります。 持ち運びはどうするんです?」

                  「バーンズ・マーティンの三挙動ホルスターがいいと思います」 ブースロイド少佐は簡潔に答えた。 「ズボンの内側に差すのが一般的ですが、脇の下に吊ってもいいんです。 これよりもっと早く抜けるでしょう」

                  「では話しは決まった」 Mは結論付けた。 「ところで、もっと大きいやつは何がある?」

                  「大きいのと言うと1つしかありません。 スミス&ウエッソンのセンチニアル・エアウエイトです。 リヴォルバーの.38口径で服に引っ掛からない様に無撃鉄です。 軽量化の為に輪胴には5発しか入りません。 しかし.38口径の威力ですからね。 弾頭のエネルギーは・・・」

                  「それで結構だよ」 Mが苛立った口調で遮った。 「そいつは書類にまとめておいてくれ。 とにかく君がいいと言うなら、それが1番いいんだろう。 で、そのワルサーとスミス&ウエッソンを007に届けてくれ。 射撃練習の世話もしてやってくれんか。 一週間もすれば充分に使いこなせる様になるだろう。 ご苦労だった。 もう下がっていいよ」

                  「失礼します」 ブースロイド少佐はそう挨拶すると、固い足取りで部屋から出ていった。

                   

                    しばらく沈黙が続いた。 氷雨が窓をかきむしる音だけが部屋に響く。 Mは窓ガラスに流れる雨を眺めている。

                    ボンドはデスクの上のベレッタとホルスターに目を移した。

                    これの一発で何度命を救われた事か。 世界のあちこちのホテルで、ベッド・カバーの上に1発ずつ弾を出して動きを確かめる。 それが済むと小さなホルスターに収めて、明暗の分かれ道になる最後のデートに出かけていったのだ。

                    Mはイスを回してボンドと向き合った。

                  「ジェームス、気の毒だな」 しかしMの口調には同情している様子など影も形も無かった。 「こいつに君がどんな気持ちを持っているか、私にだって解るよ。 しかし、これを持たせておく訳にはいかんのだ。 ダブル0の番号を持つ部下に、危ない橋を渡らせるわけにはいかん。 まともな装備をしてもらわねばならんのだ。 わかるかね? 君の仕事では、手足の1本よりも拳銃の方が大切なんだぞ」

                    ボンドはかすかに笑顔を見せた。 「解ってます。 もう文句は言いません。 ただこいつと別れるのが辛いだけです」

                  「それならよろしい。 この話しは終わりにしよう。 ところで、君に仕事をしてもらうぞ。 ジャマイカへ行ってもらう。 人事的な問題だが、あるいはそれは上べだけなのかもしれん。 月並みな調査でいいんだ。 南の陽光は君の体にもいいだろう。 ちょっと休暇を兼ねて行って来てくれ」 

                  「何か遊びみたいですね。 休暇はもう充分に取りましたが、どうしてもと言うのなら・・・、ご命令なら・・・」

                  「そうだ。 命令だ」 Mは言った。 

                   

                    続きは【ストーリー編2/8】へどうぞ。

                   

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                  007おしゃべり箱 Vol.46−2 『原作紹介/ドクター・ノオ』

                  0

                    「007おしゃべり箱」は、映画007シリーズについてのあれこれをおしゃべりしています。

                     

                    007おしゃべり箱 Talking BOX of 007

                     

                    Vol.46-2

                     

                    『原作紹介/ドクター・ノオ』

                    Ian Fleming’s Dr. No

                     

                    【ストーリー編 2/8

                     

                    by 紅 真吾

                     

                      【ストーリー編 1/8】の続きです。

                      

                      窓の外の空模様は、ますますひどくなっていた。 部屋の中が薄暗くなってくる。

                      Mはデスクの上のスタンドを点けた。 部屋の中央に温かそうな黄色の光があふれた。

                      Mはぶ厚いファイルを手前に引き寄せた。 ボンドは始めてそのファイルに気が付いた。

                      表紙の文字はさかさまだが、彼には難なく読めた。 あのストレングウェイズがどうしたと云うんだろう?

                      Mはデスクの上のボタンを押した。

                    「この件の詳しいところは、主任に話してもらおう。 つまらん事件らしいんだがな」

                      主任が入ってきた。 工兵大佐までいった男で、齢はボンドと同じくらい。 ボンドはこの男とは本部で一番仲良く付き合っている。 2人は笑顔を交わした。

                      Mは主任をもう1つのイスに座らせると、ボンドに向き直った。

                    「007、君はストレングウェイズを知ってたな。 5年ほど前の、例の宝島事件で一緒に仕事をしただろう? 彼をどう思う?」

                    「いい男です。 ちょっと短気なところがありましたが、今では角も取れているでしょう」

                    「秘書のメリー・トゥルーブラットは? 彼の右腕だったんだが」

                    「その女には会った事はありませんね」

                    「海軍婦人部隊の士官からこっちに入ってきたんだ。 なかなかの経歴の様だぞ。 写真で見ると、なかなかの別嬪だな。 どうだね? ストレングウェイズは女道楽が過ぎてはいなかったかな?」

                    「かもしれません」 ボンドは昔の彼の派手な振る舞いを思い出したが、彼に遠慮して、そう答えた。

                    「しかし、いったいその2人がどうしたんです?」

                    「それが知りたいのだ。 3週間前の同じ晩に2人とも消えてしまったのだ。 支部のバンガローを灰にしてな。 女のアパートからは何一つ持ち出されておらん。 パスポートまでそのままだ。 ま、ストレングウェイズにしてみればパスポートなんぞどうにでもなる。 飛行機は何便も出てるから、フロリダだろうが南米だろうが、その気になれば2人はどこへでも行かれる。 そうだろう?主任」

                    「はあ」 しかし、主任の返事は歯切れが悪かった。 「しかし、私はあの最後の無線連絡が引っ掛かります。 日課の無線が始まったところで途絶えてしまったんです。 駆け落ちするような2人のする事じゃありません。 それにストレングウェイズと一緒にゲームをやっていた友人達にも、いつもと同じ様に20分程で戻る、と言って出ていっています。 が、自分のクルマは置きっ放しです。 どうも妙です」

                     Mは曖昧に鼻を鳴らした。

                    「人間ってのはホレたハレたとなると時には正気の沙汰とは思えん様な事を仕出かすからな。 それでは他に考えようがあるかね? まったくあそこは平穏無事なところなんだ。 ストレングウェイズが何か大きな事件にぶつかったとは思えん。 007、君はどう思う?」

                      ボンドの考えははっきりしていた。

                    「ストレングウェイズがそんなふうに仕事を放り出しちまうとは考えられませんよ。 それにお話しによると女の方も婦人部隊の士官だったそうじゃないですか。 それほどの女がそんな血迷った事をするでしょうか?」

                    「007、君の意見はわかったよ」 Mは感情を抑えた声で言った。 「私もそう考えてはみた。 いきなり結論に飛びついたりせんよ」

                      Mは座り直してボンドの反応を待った。 パイプに手を伸ばしてタバコの葉を詰め始める。

                      そもそもMはこの事件にうんざりしていた。 部下の人事的な問題よりも、解決せねばならない問題は山ほどあるのだ。

                      Mとしてはボンドをジャマイカへやるのは、これも一応仕事の内だとボンドに思わせる方便に過ぎなかったのである。

                     

                      ボンドはいい加減に誤魔化されるつもりは無かった。 主任の言う事はもっともだ、と思った。

                    「ところで、ストレングウェイズが最後に手がけていた事件は何だったのです? 何か報告があったんじゃありませんか?」

                    「別に何も無かったな」 Mがきっぱりと言った。 パイプを主任の方にむけて、「そうだろう?」

                    「はあ」と、主任は言った。 「鳥についてのバカらしい話しがあっただけです」

                    「おう、そうだった」 Mがバカにした様に言った。

                    「動物園が言って来たたわごとだったな。  確か6週間前の植民省からの依頼だったな」

                    「そうです。 しかし動物園では無く、オーデュボン協会と云うアメリカ人の団体です。 希少になった鳥を絶滅から防ぐ活動をしているんです。 かなり力を持った団体の様ですね。 何でも何とか云う鳥の巣をダメにするからと、原爆実験をウェストコーストの方へ移させたくらいですから」

                      ボンドは興味を持った。 「そのオーデュボン協会はどうしろと言ってきたんです?」

                      Mはイライラとパイプを振った。 ファイルを主任の方に押しやる。 「君から説明してやってくれ」

                      主任はファイルを手にすると、パラパラとページをめくりだした。

                    「ベニヘラサギと云う鳥についてだね。 絶滅したと思われていたのが、ジャマイカとキューバの間のクラブ礁島に生息しているらしいんだ」

                      そこはジャマイカ保護領、すなわち英国領である。 昔はグアノ採掘の島だったが、採算が取れずにかれこれ50年ほど無人島だった。  オーデュボン協会は島に一部を借りて監視員を2人常駐させていた様だ。 戦争になってグアノの値段が上がったので、頭のいい奴が島を買い取ってグアノの採掘を再開したらしい。

                    「その島を手に入れたのは何者なんです?」 とボンド。

                    「中国人だ。 いや、半分中国で半分ドイツだね。 ふざけた名前の男だよ。 ノオ博士と自称している。 ジュリアス・ノオ博士だ」

                    「ノオ? イエス・ノオのノオ?」

                    「そうだよ」

                    「その男について解っている事は?」

                    「人付き合いを全くしないと云うだけで、何も解らないんだ」

                      島を買い取って以来、外とは没交渉らしい。 貴重なグアノを作ってくれるグアノ鳥を人が来て驚かしてもらいたく無い、といった言い分のようだ。 ところが、去年の暮れに事件が起きた。

                    「例の監視員の1人がジャマイカの海岸にカヌーで流れ着いたんだ。 体中が大やけどで4〜5日で死んでしまったんだが、死ぬ前に火を吹く竜にキャンプが襲われた、と言ったんだ」

                      竜が相棒を焼き殺してキャンプを焼き払い、本人は命からがら逃げてきた、という。

                      オーデュボン協会はそんな報告を受けると、お偉方2人をビーチクラフト機で島へと向かわせた。  ところが、そのビーチクラフト機が着陸に失敗して、協会の2人は死んでしまった。

                    「これで協会は大騒ぎになってね、カリブ海域の合衆国艦隊から一隻のコルヴェット艦をその島へ向かわせたんだ。 これを見てもかなりの圧力団体だと判るだろ?」

                      コルヴェット艦の艦長はノオ博士に丁重に迎えられたそうだ。 滑走路や飛行機の残骸を見せてもらった後で、丁重に防腐剤を詰められた棺をうやうやしく引き渡された。 例のキャンプ跡へも案内された様で、艦長は荒涼とした沼地を見て、2人がノイローゼになってしまったとしても無理はないと思ったらしい。

                      結局、彼は丁重に艦に送り返されて帰って来た様だ。

                      ここで主任は両手を広げてみせた。

                    「まあ、こんなところだね。 最後に艦長が、ベニヘラサギは5〜6羽ぐらいしか見なかった、と報告したのがオーデュボン協会に火を点けちまったんだな。 連中はこのつまらん鳥がいなくなってしまった事に腹を立てて、それ以来全て調べ上げろと、やいのやいの言い出したんだ。 植民省だってジャマイカの出先機関だって、こんな事は少しも興味無いやね。 そこで結局こっちにおっかぶさってきた、と云うわけさ」

                      主任は、これで終わりだ、という様に肩をすくめた。

                     

                      Mは不機嫌そうにボンドを見た。

                    「どうだ、007。 ああいう婆さまたちの集まりが騒ぎ始めると始末に終えん。 どこから集めるのか知らんが、金も充分に持っとるしな。 しかも厄介なのは政治家まで巻き込んでの大騒ぎだと云う点だよ。 しかし誰かが婆さま連中を黙らせねばならん。 今回はそこがイギリス領だと云う事で、こっちの仕事だと言う。 わしにどうしろと言うんだ? その島に潜水艦でも送るか? 何のためだ? ピンクのコウノトリの一族がどうなったか調べるためにか?」 

                      Mは鼻を鳴らした。 「とにかく007、ストレングウェイズの最後の事件は何だと訊ねたが、これがそれだ」

                      Mは挑む様に前に乗り出した。

                    「何かまだ聞きたい事はあるか? わしは忙しいんだぞ」

                      ボンドはかろうじて笑いをこらえた。 Mの癇癪はいつもの事だ。

                    「ファイルを拝借させて下さい」 ボンドは下手に出た。 「4人もの人間が鳥に関係して死んだ、と云うのはちょっと驚きですね。 もしかしたらストレングウェイズと秘書の女性もそうかもしてません。 何か裏がありそうに感じませんか?」

                    「持ってけ、持ってけ」 Mは、いい加減にしろ、とでも言う様に怒った声で言った。 「早く片付けてこい。 君は聞いとらんだろうが、世界はちょっとした混乱状態になっとるんだぞ」

                      ボンドは腕を伸ばしてファイルを取り上げた。 ついでにベレッタとホルスターも取り上げる。

                      しかしMは見逃さなかった。

                    「いかん、置いていけ。 いいか007、今度呼ぶ時までに2挺の拳銃の扱いを吞み込んでおくんだぞ」

                      ボンドはMの目を見つめた。 初めてこの男が憎らしいと思った。 Mがこんなに頑固で意地悪なのは、この前の失敗の懲らしめなのだ。 おまけにMにとっては、部下をのんびりさせる事など耐えられないのだ。 老いぼれ親父め!

                      ボンドは怒りを身内に逆立てさせながら、「やっておきます」と、言った。 そしてくるりとふり返ると、部屋を出た。

                     

                    *****

                     

                      ジャマイカ空港で飛行機から降り立ったボンドは、出入国管理局の建物に向かって歩き出した。

                      南国の暑さがボンドを包み込むが、ロンドンのあの刺すような寒さの後では逆に心地よかった。

                      ボンドのパスポートには、“貿易商”となっている。

                    「どちらの会社です?」

                    「ユニバーサル貿易です」

                    「こちらへはお仕事で?」

                    「いや、休暇でね」

                    「では、せいぜいお楽しみください」 黒人の管理官は無造作にパスポートを返してきた。

                      ボンドが税関へ入っていくと、柵に寄りかかった男が目に入った。

                    「クォーレル!」 ボンドが声をかける。

                    「元気かね、キャプテン」 ケイマン諸島生まれのその男は、顔中に笑いを浮かべた。

                      税関の役人はクォーレルとは顔見知りらしく、ボンドのカバンは蓋も開けずに、チョークで検査済みの印を付けた。

                      2人は出口に向かって歩き出した。 その時、どこからかフラッシュが閃いた。

                      柱の横で、ジャマイカ服を着た可愛らしい中国娘が構えていたカメラを下した。

                      娘は2人のもとへやって来ると笑顔を作って、「デイリー・グリーナー社です。 写真を撮らせて頂きましたわ。 ボンドさんですね、ジャマイカへは何日ぐらいご滞在ですの?」 と言った。

                      これはさい先が悪いぞ、とボンドは思った。 「なに、ちょっと立ち寄っただけだよ。 あの飛行機にはもっとニュースになりそうな人が乗っているだろうに」

                    「そんな事ありませんわ。 あなたは偉そうだし。 それで、ホテルはどちらですの?」

                      ボンドは肚の中で舌打ちした。 「マートル・バンク」と言い捨てると歩き出す。 「どうもありがとう、ミスター・ボンド」 娘は鈴を鳴らすような声で言った。

                      ボンドとクォーレルは外へ出ると駐車場へ向かった。 「あの女を空港で見かけた事はあるかい?」 歩きながらボンドはクォーレルにたずねる。

                    「知りませんね。 でもグリーナー社には女のカメラマンは多いですよ」

                      ボンドは漠然とした不安を感じた。 自分の写真を新聞社が欲しがる理由など無いはずだ。

                     

                      駐車場まで来ると、クォーレルが1台のクルマを示した。

                      黒のサンビーム・アルパインだった。 ストレングウェイズのクルマだ。

                    「クォーレル、このクルマはどこから持って来たんだい?」

                    「総督の副官がこれを使えって言ってきたんです。 どうしたね? いけなかったかね?」

                    「ふむ、まあいいさ」 ボンドはあきらめて言った。 「さあ乗ろう」

                      助手席に乗り込んだボンドは、自分の失敗に呆れていた。

                      こんなクルマに乗っていたら、それこそ、我こそはストレングウェイズの仲間でござい、と言いふらしている様なもんだ。 ふり出しからこんな事では、敵に先手を打たれてしまう。 

                      しかし、実際にそんな敵と云うのは居るのだろうか? 自分の思い過ごしではないだろうか?

                      暮れなずむ街道ぞいの景色を眺めながら、ボンドは暗澹とした。

                      虫の知らせか、ボンドはふと後ろを振り返った。 100ヤードばかり離れて、スモールライトだけ点けたクルマが走っている。 ジャマイカ人は大抵こんな時刻ならヘッドライトを煌々と点けるものだ。

                    「クォーレル、次の突き当りでキングストンへ向かうのと反対の右に曲がって直ぐに停めて灯りを消してくれ。 そこまではうんと飛ばすんだ」

                    「合点でさ」 クォーレルは楽しそうに応える。

                      やがて直線道路が終わって大きなカーブに入った。 クォーレルはギヤを目まぐるしく変えて、突き当りを右に曲がった。 すぐにクルマを停めると、ライトを消す。

                      ボンドは振り返ってクルマが通るのを待った。 すぐに目の前を、大型タクシーがキングストン目指して通り過ぎていった。 一瞬だったが、運転手以外は誰も乗っていないのが分かった。 2人はそのまましばらく黙って座っていた。

                    「クォーレル、空港から客を乗せずに街へ帰るタクシーなどあり得ないよ。 あいつはこっちを尾行していたんだ。 さ、気を付けてホテルまでやってくれ。 まかれたと気付いて、どこかで待ち伏せしているかもしれないからな」

                    「そんな事、言われるまでもありませんやね」 クォーレルは笑って答えた。

                     

                      2人の乗ったサンビーム・アルパインはキングストンの街並みを抜けて、ブルー・ヒルズ・ホテルの車寄せに滑り込んだ。 格式のある居心地のいいホテルだ。

                      総督官邸から予約が来ていたと云う事で、ボンドは丁重に迎えられた。

                      案内された部屋は、キングストン港が見下ろせるバルコニーが付いている部屋だった。

                      ボンドはさっそくシャワーを浴びてロンドンの生活の垢を落とすと、ルーム・サービスでジン・トニックのダブルとライムを1個取り寄せた。 ライムは半分に切ってそれぞれを大きなグラスに絞ると、氷を入れてジン・トニックを注ぐ。

                      グラスを手にしてバルコニーに出ると、キングストンの夜景を眺めながら、程よい酔いを楽しんだ。

                     

                      約束通り7時にクォーレルが夕食の迎えに来てくれた。 ボンドはもうあきらめたサンビーム・アルパインに乗ると、「どこがいいんだい」 とクォーレルに問いかけた。 「あたしはキングストンでは波止場の近くのナイト・クラブに行くんです。 普通の店ですよ。 でも、料理と音楽はいいんです」

                    「そりゃ楽しみだな」

                    「実は古くからの友人がやってる店なんですよ。 “タコ斬り”って仇名なんですけどね、昔し大タコと格闘したところからそう呼ばれているんです」

                      クルマは洒落たレストランやナイト・クラブの前を素通りして、住宅地に入った。 そこも通り過ぎると、あたりは貧民街になる。

                      やがて道路がカーブして、海から引っ込んだあたりに金色のネオン看板が現れた。

                      クォーレルはそこの駐車場にクルマを停めた。 ボンドは門をくぐって店に入って行くクォーレルに続いて、芝生に棕櫚を植え込んだ庭に入った。

                      洒落た白のタキシードを着た大男がやって来た。

                    「よお、クォーレル。 久しぶりだね。 どの席にしようか?」

                    「やあ“タコ斬り”、今日はこの旦那と話しがあるから、バンドから離れた席の方がいいな」 大男は2人を波打ち際に近い、棕櫚の木の下の静かな席に案内した。

                    「お飲み物は?」 ボンドは例のジン・ライムを注文し、クォーレルはビールを注文した。

                      数ヤード先では砂浜に打ち寄せる波が単調な音を立てている。 頭上では棕櫚の葉が夜風に静かにそよいでいた。 ロンドンでの生活とは別世界だ。

                    「この店は気に入ったよ」 ボンドがそう言うと、クォーレルは嬉しそうに笑った。

                    「あの“タコ斬り”はあたしの親友なんですよ。 キングストンの事は何でも知ってます。 あいつもケイマン諸島の生まれでしてね、あたしと一緒にボートに乗ってた事もあったんです。 その頃、あいつはカツオ鳥の卵を採りにクラブ礁島まで出かけて行きましてね、離れ岩へ泳いでいくところで大ダコに捕まったんです。 クラブ礁島はこの辺りと違って、キューバ海溝の近くなんで海が深いせいか、タコもバカでかいのがいるんですよ。 あいつはだいぶひどい目にあったみたいです。 なんとかタコの足を斬り払って抜け出せたようですが、肺が片方つぶれちまったんです。 そんなこんなでボートの権利の半分をあたしに売ると、キングストンに来ちまったんです。 戦争前の事ですけどね。 今ではちょっとした金持ちですよ。 こっちは相変わらず漁師をやってるってのにねえ」 ここでクォーレルは苦笑いした。

                    「クラブ礁島ってのは、どんな島なんだい?」

                    「近頃じゃ魔の島ってことになってますぜ」 クォーレルはボンドを鋭く見返した。 「戦争中に中国人の金持ちが島を手に入れて、人夫を運び込んで鳥の糞を掘り出し始めたんですがね、それ以来誰も島に近づけさせないし、誰も島から出さないんです。 みんな触らぬ神に祟りなしって言ってますよ」

                    「そりゃまた、なぜだね?」

                    「向こうは監視を大勢雇ってるんです。 機関銃まで装備してるんですよ。 レーダーも持ってるみたいです。 あたしの仲間でもあの島に行って帰ってきたのは居ませんや。 正直なとこ、あたしもあの島はおっかないです」 そう言うクォーレルは、確かにおびえていた。

                      料理が来た。 ボンドは食べながら、今回の発端であるストレングウェイズの事件をクォーレルに話した。

                      クォーレルは熱心に聞いていた。 火傷を負った監視員の事や飛行機が墜落した事は、特に関心を抱いた様だ。

                      食事が終わると、「ねえ、キャプテン」と、静かに言った。 「鳥だか何だかがクラブ礁島に居て、その中佐がその事に首を突っ込んでいたとすれば、中佐もその女の子も奴らに消されたに決まってますよ」

                    「なぜそうはっきりと言えるんだい?」

                      クォーレルは両手を広げてみせた。

                    「判り切った事ですよ。 あの中国人は自分の島が覗かれるのをとても嫌ってますからね。 あたしの友達も、島に近づこうとしたために殺されたのが判ってます」

                     

                      その時、フラッシュの光がボンドをとらえた。

                      ふり返ると、空港にいた中国娘が棕櫚の木の陰に立っていた。

                    「クォーレル、あの女を捕まえろ」

                      クォーレルはすばやく立ち上がると、女の所へ行って手を差し伸べた。 「こんばんは、お嬢さん」

                      女はライカから手をはなしてクォーレルの手を取った。

                      その瞬間、クォーレルは身体をくるっと回して、女の手を背中にねじ上げた。

                    「何すんのよ。 痛いじゃないの」

                    「うちのキャプテンがあんたと一緒に飲みたいとさ」

                      クォーレルは女を連れてテーブルに戻ると、足先でイスを引き出して自分の横に女を座らせた。

                    「こんばんは、お嬢さん。 なぜまた私の写真を撮るんだね?」

                    「夜のスナップを撮ってたんです。 最初の写真は失敗だったんです。 この人に手を離せと言って」

                    「新聞社の仕事かね? 名前は?」

                    「言いたくないわ」

                      ボンドはクォーレルに片方の眉を上げてみせた。

                      クォーレルは女の手首をねじ上げた。

                      女は体をくねらせながら「あっ」と喘いだ。

                    「言うわ。 アナベル・チャンよ」

                      ボンドはクォーレルに、「おやじを呼べ」と、言った。 クォーレルは空いている手でフォークを取ると、グラスをカンカン叩く。 大男があわててとんできた。

                      ボンドはおやじを見上げて「この女を知っているかね?」と、訊ねた。

                    「へい旦那、時々来てますよ。 この女が何か?」

                    「いや、実は私のポートレートを撮らせてくれ、と言うんだが・・・」と言って、本当にグリーナー新聞社のカメラマンか、新聞社に電話して確かめてくれ、と頼む。

                      亭主が下がると、ボンドは女に向き直った。

                    「上司の部長が、キングストンでは気を付けろ、と言ってたんでね。 なぜ私の写真を撮りたがるのか、訳を話してくれないかな」

                    「言ったでしょ。 仕事よ」 女は不貞腐れたまま答えた。

                      亭主が戻ってきた。 「確かにアナベル・チャンは新聞社のフリーランスのカメラマンですね。 なかなか上手い写真を撮るそうですよ」

                      ボンドは亭主に礼を言って下がらせた。

                    「フリーランサーか。 では私の写真を撮れ、と依頼してきたのは誰だね? いいかげんに白状しろよ」

                    「いやよ」 女はそっぽを向いた。

                    「よしクォーレル、やれ」 ボンドはそう言うと、イスに楽々とすわり直した。 この答えによっては、何週間もの手間がはぶけそうだ。

                      クォーレルの右肩がぐっと沈んだ。

                      女は苦痛に顔をゆがませながら、身を足でよじらせた。 脚がバタバタと床を蹴る。 顔には玉の汗が吹き出していた。

                    「誰だね?」 ボンドは穏やかに問いかけた。

                      と、その時、女の左手がクォーレルの左の頬を叩いた。 バシャンという音と共に、フラッシュバルブのガラスがテーブルに飛び散る。

                    クォーレルは頬に手を当てて手に付いた血を見ると、「あれま」と言って、感心した様な笑顔を見せた。

                    「この女は相当しぶといですね。 腕を折りますか?」

                    「いや、離してやれ」

                      女は後ずさりしながら2人を罵った。 「嫌な奴。 あの人にひどい目に会うからね」 そう言うと棕櫚の木の間を走り去って行った。

                    「我々も勘定を済ませよう」 ボンドはそう言って立ち上がった。

                     

                     続きは【ストーリー編 3/8】へどうぞ。

                     

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                    007おしゃべり箱 Vol.46−3 『原作紹介/ドクター・ノオ』

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                      「007おしゃべり箱」は、映画007シリーズについてのあれこれをおしゃべりしておます。

                       

                      007おしゃべり箱 Talking BOX of 007

                       

                      Vol.46-3

                       

                      『原作紹介/ドクター・ノオ』

                      Ian Fleming’s Dr. No

                       

                      【ストーリー編 3/8

                       

                      by 紅 真吾

                       

                       

                       

                        【ストーリー編 2/8】の続きです。

                       

                        翌朝、ボンドは部屋のバルコニーで朝食をとっていた。

                        女カメラマンからは情報は引き出せなかったが、1つだけ収穫があった。

                        女の捨て台詞の「あの人にひどい目に会うからね」、とは、自分を監視対象としている人物が居る、と云う事だ。

                        今ではボンドは、ストレングウェイズとトゥルーブラットは殺されたのだ、と確信していた。

                        そして、2人の殺害を命じた人物は、ボンドがやって来た目的も知っているに違いない。

                        ボンドが2人の死の手掛かりを掴んだら、ボンドも消してしまおうとするだろう。

                        果たして、どんな手をくり出してくるか・・・。

                        ドアにノックの音がした。 ボンドは立って錠を開ける。 クォーレルが入って来た。

                      「おはようございます、キャプテン」 2人はバルコニーに出て腰を下した。

                      「さて、と」 ボンドがきり出す。 「私の今日の1日は総督官邸と他を回って潰れちまうだろう。 その間に君にやっておいて貰いたい事があるんだ」

                      「いいですとも。 何なりと」

                      「まず第一に今のクルマだ。 あのクルマは何とかしなくては」 ボンドはそう言うと、波止場あたりで我々と似たような2人を雇ってモンテゴのガレージまで届けさせるように言った。 我々のクルマは別にレンタカーを借りる。 それと、アジトとして、この前の時みたいなバンガローをひと月ばかり借りる。

                        ボンドはポケットから札束を出すと、「200ポンドある。 これで準備してくれ」と、クォーレルに手渡した。

                        クォーレルが出かけていくと、ボンドはタクシーを呼んでもらって、総督官邸へと向かった。

                       

                        植民省に居る友人から、ジャマイカの総督に挨拶に行くのは堅苦しいだけで何の役にも立たない、と聞いていたが、一応顔だけは出しておかねばならないだろう。

                        15分ばかり控えの間で待たされた後、副官に案内されて総督の書斎に入った。

                        総督は部屋に入って来たボンドに、笑顔も見せなければ立ち上がりもしない。

                      「おはよう。 えーと、ボンド君とかいったな。 まあ掛けたまえ」

                        ボンドは如才なく挨拶を口にするとイスに腰掛けた。

                        総督はボンドを胡散臭そうに見つめた。

                        総督の話しぶりからすると、2人は駆け落ちした、で終わりにしているようだった。 暗に、情報部内の痴話騒ぎに、総督府を巻き込まんで欲しい、といったスタンスである。

                        早く厄介払いをしたいのか、「それはそうと、私の部下に会いたいそうだね」と、言った

                      「ええ、司政部長とちょっとお話ししたいんです。 クラブ島の事も調べる様にと部長から言われてますので」

                        総督は話題が変わった事でほっとした様に口を開いた。 「いいとも。 ブレイデル=スミス君に会わせよう」

                        そして副官を呼ぶと、ボンドを司政部長の部屋へ案内する様命じた。

                        ボンドは総督と握手をして、部屋を後にした。

                       

                        司政部長はボンドと握手した手を元気よく振った。

                      「ボンド、ボンド・・・どこかで聞いた事のある名前だね。 そうだ、何年か前の宝島事件だ。 あの時の資料が2〜3日前にそこらへんに出てたな。 いや、全く面白い。 喜んで手を貸すよ」

                        ボンドの顔に笑みがこぼれた。 ようやく話しの合いそうな男が見つかった。

                      「実は私はストレングウェイズの件で来たんです」 ボンドは神妙に言った。 「でもその前にちょっとお伺いしますが、宝島事件の書類が目に入ったとおっしゃいましたが、どんな具合だったのですか? ぶしつけな質問ですいませんが」

                      「いや、それが君の仕事なんだろうさ。 あれは確か新しく来た秘書のデスクの上だったな。 書類を整理すると言って、他の書類もいっぱい出てたよ。 たまたま私の目に止まっただけさ」

                      「そういう事でしたか。 失礼しました」 「実は私がジャマイカに来た事に、かなり関心を持っている人物が居る様なので」 ボンドは弁解がましく笑ってみせた。 そして、クラブ島やその島を買ったノオ博士、グアノの採掘について聞かせて欲しい、と言った。

                        司政部長は、「書類を持って来させよう」と言うと、デスクの上のベルを鳴らした。

                        ボンドの後ろでドアが開く音がする。

                      「ミス・タロ、クラブ島の書類をたのむ。 それと去年の監視員の件のやつも」

                      「はい」、と声がしてドアが閉まる音。

                        司政部長はデスクの上で両手を組むと、改めてボンドに向き直った。

                      「ところでグアノだが、君も知っている通り、あれは2種類の鳥のフンだ」 司政部長はそう言うと、語り始めた。 2種類の鳥とは、覆面カツオドリとグアノドリだが、クラブ島にいるのはグアノドリだけだと言う。 グアノは1850年頃、絶好の天然肥料として注目された

                      「こうなるとグアノドリというは、人間の手で届かない魚を肥料に変える機械みたいなものだね」

                        ただ、このあたりの海の水は太平洋側とは少し違う様で、グアノの成分が少し劣るので安かったらしい。 そのうちにドイツで人工肥料が発明されると、クラブ島のグアノ採掘は採算が合わなくなってすたれてしまった。

                        ところが、人工肥料が土壌を弱らせると云う欠点が明らかになってくると、グアノの値が上がりはじめた。 が、多くの国は自国の農産業向けにグアノ採掘を管理し始める。 そうなって、クラブ島のグアノも陽の目を見る様になった。

                      「戦争の初期の頃だよ、とにかくこの中国人は抜け目がなかったんだな。 1万ポンドかそこらで島を買うと、人夫を送り込んでグアノの採掘を始めたんだ。 品物はヨーロッパはベルギーのアントワープへ直送だ。 向こうから月に1回船が来るんだよ」

                      「しかしねえ」 と、ここでプレイデル=スミスは口をはさんだ。 どうやらアントワープでの売値からすると、採算がとれているかあやしいらしい。

                      「人夫にどれくらいの給料を払っているのやら。 ま、一種の強制労働キャンプなんじゃないかな。  妙な噂は耳にするが、とにかくあの島から出てきた人間はいないから、皆目解らないんだ」

                       

                      「それにしても」 司政部長はそう言ってベルを鳴らした。 ボンドの後ろでドアが開く。 「おいおいミス・タロ、書類はどうなったんだ?」 ブレイデル=スミスは苛立し気に言った。

                      「すいません。 どこにも見つからないんです」 静かな声が答えた。

                      「どういう事だ? 最後に見たのはだれだ?」

                      「ストレングウェイズ中佐です」

                      「しかし彼がここへ返しに来たのははっきりと覚えているぞ。 それからどうなったんだ?」

                      「わかりません」 女の声は平然としていた。 「表紙はありますが、中身が無いんです」

                      ボンドはちらっと後ろを振り返った。 彼は心の底でニヤリと笑った。 書類がどうなったか解ったのだ。 また、宝島事件の書類がなぜ秘書のデスクの上に出ていたかも解った。

                        角縁眼鏡をかけた有能そうな秘書は、中国人だったのだ。

                       

                      *****

                       

                        司政部長はボンドをクィーンズ・クラブへ連れて行くと、昼食をご馳走してくれた。

                        食事の間中、ブレイデル=スミスはジャマイカの噂話しをしてくれた。

                      「ユダヤ人やシリア人、インド人も多いが、一番多いのは中国人だね」 ブレイデル=スミスはそう言った。

                      「その中国人が黒人の娘と遊んだ結果が、町中にゴロゴロしているチグロ、つまり中国系ニグロだよ。 彼らは世間から見捨てられているが、なかなかどうして、しぶとい人種だぜ」

                      「あなたの秘書もそうでしょう?」

                      「そうなんだ。 頭のいい子で仕事もよくできる。 募集に応募してきた中ではずば抜けていたね」

                      「そういった連中は、何か組織でも作っているんですか? 誰か中国系ニグロ社会の指導者といった人物は居るんですか?」

                      「いや、まだだね。 しかし、いずれは誰かがまとめるだろう。 そうなると、ちょっとした圧力団体だね」

                        ブレイデル=スミスはチラッと腕時計を見た。

                      「そろそろ戻らなくては。 いったいあの書類はどうなっちまったんだろう? とは言っても、あの書類には通り一遍の事しか記録してなかったがね。 そうそう、君を博物館まで送っていって、地図の係の男を紹介しよう」

                       

                        ボンドは博物館まで送ってもらい、陸地測量部が作ったクラブ島の地図を描き写した。

                        島は50平方マイルぐらいだ。 東側の2/3ぐらいが湿地と浅い湖になっている様だ。

                        湖からはゆるやかな河がうねうねと南側の海に向かっていた。

                        島は西の方に向かって高くなっていて、500フィートぐらいの山になり、急に断崖の様になって海に下っていた。

                        ボンドは地図を返却すると博物館を出た。

                        まだ4時になったばかりだったが、早々にホテルに帰って休む事にする。

                        ホテルのフロントに、クォーレルからの伝言が来ているだろうと思ったが、「おことづけはありません」、だった。 が、「総督官邸から果物カゴが届いてます。 お昼チョッと過ぎでした」

                        ボンドは部屋の鍵を受け取ると、階段を上った。 ありそうも無い話しだ。

                        部屋のテーブルの上に、大きな果物の飾りカゴがのっていた。 タンジェリン蜜柑、グレープフルーツ、ピンク色のバナナ、サワーソップ、インド林檎、さらに温室ものの桃まで2つ入っている。

                        カゴの柄の太いリボンに、白い封筒が付いていた。 ボンドは封筒を光に透かしてみてから封を開いた。 贅沢な白い無地の紙に、タイプで打ってあったのは、「総督からのお見舞い」

                        ボンドはフンと鼻で笑った。

                        耳をカゴのそばに寄せてみる。 次にカゴを手にすると、中身を床にばらまいた。

                        カゴの中は果物だけだった。 となると、調べる事は1つだけだ。

                        ボンドは桃を1つ取り上げた。 意地の汚い男なら、真っ先に食べそうなやつだ。 浴室に持って行くと、洗面槽に投げ入れる。

                        次に寝室へ行ってスーツケースを調べた。 2つの錠の周りにふりかけておいたタルカムパウダーの粉がこすれている。

                        今度の相手は、ボンドがこれまで相手にしてきた連中よりも、慎重さが欠けている様だ。

                        ボンドはスーツケースの中の“道具箱”から、時計職人が使う様な拡大鏡を取り出した。

                        浴室に戻ると拡大鏡を目にはめて、桃を調べる。

                        桃を回すボンドの手が止まった。 小さな針の穴を見つけたのだ。 桃のスジの所にあったので、拡大鏡が無かったら気が付かなかっただろう。 穴の周りがかすかに茶色く変色している。

                        ボンドは桃を置くと、鏡に写っている自分に笑いかけた。

                        では戦闘開始なのだ! こいつは面白い事になるぞ。 やはり自分の勘は当たっていたのだ。 ストレングウェイズと秘書は殺されたのだ。 2人が際どい所まで探り当てたからだ。

                        そこへボンドが来る事になったのだが、ミス・タロによって敵はボンドの到着を待ち構えていたのだ。 あのタクシーの運転手や、女カメラマンのアナベル・チャンを使って、ボンドのホテルを突き止めた。

                        そして、この果物カゴだ。 これはクラブ島からボンドへの遠距離の狙撃なのだ。 引き金の背後に居るのは、もちろんノオ博士に違いない。

                        他の果物も、全てつけ根のくぼみやスジに隠されて針を突き刺した穴があった。

                        ボンドはフロントに電話してダンボール箱を1つ頼んだ。 次に総督官邸の司政部長に電話をかけた。 先ほどの礼を言ってから、チョッと調べてもらいたい物がある、と果物の分析を依頼する。 タクシーを呼んで、ダンボール箱に詰めた果物を総督官邸に届けさせた。

                        そこまで片付けてからボンドはシャワーを浴びて着替えをし、今日最初の酒を注文した。

                       

                        グラスを手にしてバルコニーへ出ようとした時、電話が鳴った。 クォーレルからだった。

                      「キャプテン、全部片付きましたよ」

                      「じゃ、バンガローもOKかい?」

                      「万事OKです。では明日の朝、また」

                        ボンドは受話器を置くとバルコニーへ出た。

                        ここジャマイカのキングストンに着いたのは、昨日の丁度今ごろだ。 まだ1日しかたっていないのに黒幕が浮かび上がってきた。

                        Mに、事態は予想とはだいぶ違っている、と報告すべきだろうか?

                        しかし、何て報告する?

                        ノオ博士が毒入りの果物を届けてきた、か? 届けてきたのが確実にノオ博士だとは言い切れないし、毒入りかどうかも分析待ちだ。

                        ボンドには暗号電報を読むMの姿が目に見える様だった。

                        Mはインターフォンのレバーを押すと、「主任か?007はやはりダメみたいだな。 ナンやかんやと言っ後で、誰かが毒入りバナナを食わせようとしてきた、とかぬかしているぞ。 早く呼び戻してくれたまえ」

                        ボンドはMへの報告の件は頭から追い出した。

                        酒のお代わりを注文して、明日からの計画をじっくりと検討する。

                        客のまばらになった食堂で夕食をとり、明日の出発のために荷造りをすませると、その晩は早めにベッドに入った。

                       

                        次にボンドが気が付いたのは、夜明け前の3時だった。 頭のすぐ横に置いた腕時計の夜光盤が3時を示している。

                        何で目が覚めたのだろう?

                        ボンドはすぐにでもベッドから滑り出せる様にと、そっと体を動かした。

                        ボンドは動くのを止めた。

                        右の踵で何かがモソモソと動いている。 そいつが脛の内側を這い上がってくるのだ。

                        何かの種類の虫だ。 それもかなり大きくて長い。

                        ボンドは髪の毛が逆立つのを感じた。

                        こいつはムカデだ。 ボンドは凍り付いた様にじっとする。

                        博物館の標本で、熱帯のムカデのアルコール漬けを見た事があった。 5インチから6インチもある長い奴で、ごつい頭の左右に曲がった毒の牙が出ていたのを思い出す。 その標本ビンの下には、毒が動脈に入ると死に至る、とあった。

                        ムカデは膝の上を進んで、太腿の方に上がってきた。 ボンドの全神経が、ゆっくりと這い上がる2列のムカデの足に集中する。

                        ムカデは脇腹のあたりまで来ると、股ぐらの方に方向転換してしまった。

                        そんな所にもぐりこまれたら一大事だ。

                        しかし、また向きを変えて、胸の方へ上がってくるのが分かった。

                        心臓の上に来た。 そんな所を嚙み付かれたら、ひとたまりもあるまい。

                        ムカデはゴソゴソと胸毛をかき分けながら、鎖骨の所に来た。 そいつが止まった。

                        何をしてるんだ? そいつの頭が前後左右に探り回っているのが分る。

                        ボンドは少しずつシーツを下げて、そいつが這い出らる隙間を作った。

                        ムカデは首の横に来た。 もしかしたら脈拍の動きに引き寄せられたのかもしれない。

                        おい、何でも無いよ。 早くいい空気を吸いに出てってくれ!

                        これがムカデに通じた様に、そいつは顎を登ってボンドの顔の上を歩き出した。

                        瞼の上を2列の足が通り過ぎていく。 が、髪の生え際で止まってしまった。

                        頭の先を額にこすり付けているのが分る。 額に浮き出た塩辛い汗を舐めているのだ。

                        ボンドにはそれがはっきりと分った。 気が遠くなりそうになる。

                        ムカデはまた動き出した。 髪のジャングルに分け入って行く。

                        髪の中が気に入っちまいやしないか? そこで落ち着いてしまうのではなかろうか?

                        ムカデはボンドの頭とシーツの境の所に来た。 枕の上に降りるか、髪の中に居座るか? ムカデが止まった。 ボンドの神経は“出てってくれ!”と悲鳴を上げていた。

                        ムカデが動き出した。 そいつはゆっくりと髪の毛から枕に移る。

                        今では2列に並んだ足が木綿の生地をカサカサと引っかく様に歩く音が聞こえる。

                        ボンドはベッドから床に飛び出した。

                        ドアに駆け寄り部屋の灯りを点ける。 ボンドはヨロヨロとベッドの傍に寄った。

                        居た居た。 ムカデは枕の下側にゴソゴソと入り込むところだった。

                        ボンドは反射的に枕をはたき落とした。 神経が静まるまで自分を抑えて待つ。

                        それから枕を部屋の真ん中に放り出した。

                        ムカデは枕の下から這い出して、カーペットの上を歩き出した。

                        ボンドはもう平気だった。

                        靴を片方持ってくると、無造作にムカデを叩き潰した。 固い殻が潰れるグシャっという音。 ムカデは右に左にもがいている。

                        5インチはあるくすんだ茶色の死神。 ボンドはそいつをもう1度ひっぱたいた。 そして靴を放り出すと、浴室に飛び込んで、激しく吐いた。

                       

                      *****

                       

                        翌朝、ボンドはクォーレルが借りてきたレンタカーを運転して、ホテルを後にした。

                      「ところでクォーレル、ムカデを知ってるかい?」

                        クォーレルはこの質問の意図をはかりかねたようで、横目でボンドを見た。 が、ボンドは何食わぬ顔をしながら運転を続ける。

                      「そうですねえ、ジャマイカには凄いのが居ますよ。 4インチから5インチなんてのは、ざらですね。 腐った木やジメジメした所に居ます。 噛まれると人間でも死ぬですよ。 どうしたんです? ムカデが出ましたかね?」

                        クォーレルは土性骨の座った男だが、変に不安を感じさせる事も無い。

                      「では新しい建物に居る事はあるかい? 引き出しの中とかベッドの中とか」

                      「それは無いですね」 クォーレルはきっぱりと言い切った。 「誰かが入れれば話しは別ですけど」

                      「なるほどね」 ボンドはそう言うと、話題を変えた。 「それはそうと、サンビームを預けた2人はちゃんと乗っていったかい?」

                      「大丈夫。 2人共大喜びでしたよ。 それにあの2人はあたし達によく似てますよ」 クォーレルは笑った。 ただ、あまり素性の良くない連中だ、と言い足した。 白人は淫売宿で帳簿付けていた男で、黒人は乞食を拾った、と言った。

                      「まあクルマが運転できるだけで充分だよ。 ただ無事にモンテゴまでたどり着ければ良いがね」

                      「心配ありませんよ。 向こうのガレージにちゃんと入れなかったら、警察に盗難届を出す、と脅しておきましたから」 クォーレルはボンドの心配を勘違いしているようだった。

                        ボンドはボー・デゼールのバンガローに向かって街道を走らせていく。

                      「ねえキャプテン」 クォーレルが口を開いた。 「すいませんが、これからどうするのかプランを聞かせちゃもらえませんか? 旦那の肚の底が、イマイチ解らないんです」

                      「実は自分でもよく解っていないんだ」 ボンドはギアをトップに入れて、のんびりと街道を走らせていく。

                      「私がここに来たのは、ストレングウェイズ中佐とその秘書が失踪した件の調査なんだ。 みんなは2人は駆け落ちしたと思っている様だが、私は2人は殺されたと思ってる」

                      「なるほどね。 で、誰がやったと思うんです?」

                      「君と同じだよ。 ノオ博士さ。 ま、そうは言っても、単なる憶測に過ぎないけどね。 しかしキングストンに着いてからの24時間で、いろいろとおかしな事があってね。 そんな訳で行方をくらます為にサンビームをモンテゴにやったんだ。 バンガローに2〜3日隠れるのも、その為なんだ」

                      「バンガローでは何をするんです?」

                      「まず第一に私のこの体を鍛え直す。 この前の時みたいにね。 覚えているかい? 手伝ってほしいんだ」

                      「覚えてますとも。 それぐらいの事ならできますよ」

                      「それから2人でクラブ島へ行ってみようと思ってるんだ」

                        クォーレルはヒューっと口笛を鳴らした。

                      「ちょっと探ってみるだけだよ。 監視員のキャンプがどうなったのか、この目で見たいんだ。 怪しいふしがあったらさっさと逃げ出して、今度は正面から堂々と行く。 軍隊をいくらか連れていってもいいな。 とにかく、何か手掛かりが欲しいんだ」

                        クォーレルはズボンのポケットからタバコを取り出した。 火を点ける手が震えている。

                      「キャプテン、あの島に忍び込むなんて正気の沙汰じゃ無いって事は、承知の上ですね」

                        クォーレルはすっかり固くなっていた。 ボンドは何も言わない。

                        クォーレルはボンドの黙りこくった横顔を見つめながら、「一つだけお願いがあります」と、早口で言った。 「あたしにはケイマン島に親兄弟が居ます。 出発前に、あたしに生命保険を掛けてくれませんか?」

                        ボンドは逞しい褐色の顔を見つめた。

                      「いいともクォーレル。 明日ポートマリアで手続きするよ。 目いっぱい掛けよう、5千ポンドぐらいな。 ところで、島へ行くのはカヌーかい?」

                      「そうですね」 クォーレルの声は渋りがちだった。 だが、新月の晩が良いだろう、と言った。

                      「どれぐらい島に居るつもりです? 食料はそんなにたくさん持って行けませんよ」

                      「3日ぐらいは覚悟してるんだ。 天気がくずれて一晩やそこら足止めを喰うかもしれない」 「拳銃は私が持っていくよ。 どんな事になるか分からないからね」

                      「ええ」 クォーレルは力をこめて言った。 が、それっきり黙り込んでしまった。

                       

                        ポートマリアの街を通り過ぎると、街道からそれた。

                        キビ畠の中をしばらく走ると、ボー・デゼール荘園の巨大な廃墟が現れる。

                        クルマは目指すバンガローの門に着いた。 クォーレルがクルマを降りて錠を開ける。

                        バンガローに入ると、ボンドは半ズボンにサンダルと云うなりに着替えた。

                        クォーレルがベーコンを焼く旨そうな匂いが漂ってきた。

                        2人は朝食を食べながら、ボンドの体を鍛えるメニューを詰めていく。

                        朝は7時に起床。 1/4マイルの水泳、朝食、日光浴1時間、1マイルのランニング、また水泳。

                        昼食の後は昼寝、日光浴、1マイルの水泳。 夕方は温浴とマッサージ、夕食、9時に就寝。

                        ボンドは朝食を済ませると、さっそく日課を始めた。

                       

                        それからの1週間の間、訓練をじゃまするものは無かった。

                        ボンドがこの訓練キャンプから出かけたのは、買い物とクォーレルの保険の契約だけだった。

                        ただその間、チョッと気になった事が2つあった。 デイリー・グリーナー紙に載っていた短い記事と、ブレイデル=スミスからの電報である。

                        グリーナーの記事は、サンビーム・タルボットの事故を伝えていた。

                        事故が起きたのは、キングストンからモンテゴに通じるスパニッシュタウンとオコ・リオスの間の曲がりくねった道だとの事。

                        カーブを曲がったサンビームに、運転を誤った大型トラックがぶつかった、とあった。

                        車は両方とも谷底に落ち、サンビームに乗っていたハーバー街のベン・ギボンズ氏と住所不定のジョシュア・スミス氏の死亡を伝えていた。

                        記事は警察のコメントとして、サンビームの持ち主である英国人旅行者ボンド氏に、参考人として最寄りの警察署に出頭してもらいたい、で終わっていた。

                        ブレイデル=スミスからの電報は、「ウマヲモコロスセイサンイリ ヤオヤヲカエロ ウマクヤレ スミス」と、あった。

                        ボンドは新聞も電報も燃やしてしまった。

                       

                        クォーレルがカヌーを手に入れてきて、2人は3日ばかりカヌー航海の稽古をした。

                      「この調子なら島まで7時間か8時間ですよ。 島に近づいたら帆を下して漕いでいきます。 レーダーに引っ掛かりたくないですからね」

                        いよいよ最後の夜、ボンドは自分が気負い立っている事が分かっていた。 今回の事件は冒険なのだ。 謎、そして残忍な敵。 それに「日向ぼっこの休暇仕事」なんて言っていたMの度肝を抜いてやる、といった満足感があった。

                        ボンドは寝室に入って、2挺の拳銃を取り出した。 どっちを持っていこうか?

                        2挺を代わりばんこに手にしてみる。 重いスミス&ウエッソンの方が良いだろう。 もし撃ち合いになったとしても、接近戦ではあるまい。 無骨でずんぐりした、このリヴォルバーの方がワルサーより射程が長いから勝手が良さそうだ。

                        ボンドはホルスターをズボンのベルトに留め、拳銃を収めた。

                        バンガローの外では、島の奥から海に向かう“葬儀屋の風”が吹いていた。

                        ボンドはクォーレルと共にカヌーを海に押し出した。 クォーレルが船尾に乗り、ボンドは前の縁と舳先の間に乗り込む。

                        2人は櫂を使って岩礁の間の水路を進んだ。 岩礁の外の海は穏やかだった。 クォーレルがキャンバス地の帆を上げた。

                        カヌーは風を受けて、滑る様に進んでいく。 ボンドが舵を交代する真夜中頃が中間地点だろう。 ボンドはため息をつくと、膝の上に頭を伏せて目をつぶった。

                        ボンドが目を覚ました時、腕時計の夜光盤は12時15分だった。 ギクシャクと脚を伸ばして、ゆっくりと縁をまたいだ。

                      「ごめんごめん、もっと早くに起こしてくれればいいのに」

                      「何でもありませんよ」 クォーレルは白い歯を見せて笑った。

                        ボンドはクォーレルと場所を交代して、舵を握った。

                        夜の海はますます暗く寂しくなっていくばかりで、何の変わった事も起こらない。

                       

                        トビウオの一群が舳先の前で水を切ってバラバラと散っていった。 しばらくカヌーと並んでついてくる奴もいる。 何かもっと大きな魚に追われているのだろうか?

                        ボンドはカヌーの下、何百尋の深みを想像した。 サメやバラクーダ、バショウカジキなどが静かに泳ぎ回っているのだろう。

                        それよりもっと下の暗い深海には、1フィートの大目玉を持った50フィートもある大イカ。 クジラの胃袋から発見された断片から推測されるだけで、誰も見た事の無い海の怪物が飛行船の様に悠然と海中を漂っているに違いない。

                        1時、2時、3時、4時。 クォーレルが目を覚まして伸びをした。 「陸の匂いがしますよ」

                        水平線近くに、ひと際暗いところが見える。 淡い月がゆっくりと背後に昇っている。

                        2人はまた場所を交代した。 クォーレルが帆を降ろして舵を握る。

                        やがて目指す島は、目の前の2マイルばかり向こうにはっきりと姿を現した。

                        夜明けが近いので急がねばならない。 ボンドは櫂を取って一心不乱に漕いだ。

                        カヌーはいつの間にか島の周りの環礁に達していた。

                        クォーレルは環礁に沿ってカヌーを進め、水路を探す。

                        島の砂浜が途切れて、水が島の奥へと続いている所があった。 河だ。 クォーレルはカヌーほ舳先を河口に向けた。

                        カヌーは渦潮に乗って、何度も船底を環礁にガリガリとぶつけたが、いきなり静かな水面に入った。

                        カヌーが浜に着いた。

                        2人は急いでマングローブの茂みのはずれまで押し上げる。 それから乾いた海藻や流木などでカヌーを覆った。

                        それが済むと、クォーレルは棕櫚の葉の長いのを切って来て、砂浜に残った足跡を掃いて均していく。

                        5時になっていた。 まだ暗かったが、程なく夜が明けるだろう。

                        2人はくたくたに疲れていた。 2人は二言三言声を掛け合うと、クォーレルは岬の岩の間に姿を消した。

                        ボンドもホンダワラの大きな株の下で、乾いた砂を掘って横になった。

                       

                       続きは【ストーリー編4/8】へどうぞ。

                       

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                      著者自画像

                      profilephoto 007映画の熱烈なファンです。 それ以上でもそれ以下でもない、と自負しております。

                      記事の種別は、ツキイチ掲載の「Vol.シリーズ」と適宜掲載の「番外編シリーズ」と作品紹介の「特別編」の3種です。

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                      • 007おしゃべり箱 Vol.28 『ジョージ・レーゼンビー 考』
                        紅真吾
                      • 007おしゃべり箱 Vol.28 『ジョージ・レーゼンビー 考』
                        007
                      • 007おしゃべり箱 Vol.48−2 『ボンドのベレッタ.25口径の正体 / 後編』
                        カルマン・フィッシュ
                      • 007おしゃべり箱 Vol.46−8 『原作紹介/ドクター・ノオ』
                        カルマン・フィッシュ
                      • 007おしゃべり箱 Vol.37 『原作小説紹介/カジノ・ロワイヤル〜解説編』
                        veronicais69
                      • 007おしゃべり箱 Vol.44−6 『原作紹介/ロシアから愛をこめて』
                        紅真吾
                      • 007おしゃべり箱 Vol.44−6 『原作紹介/ロシアから愛をこめて』
                        カルマン・フィシュ
                      • 007おしゃべり箱 Vol.40−3 『原作紹介/ムーンレイカー〜ストーリー編(後編)』
                        カルマン・フィッシュ
                      • 007おしゃべり箱 Vol.39『パロディ作品』
                        カルマン フィッシュ
                      • 007おしゃべり箱 番外編(138) 「ジェームズorジェームス」
                        カルマン・フィッシュ

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